本日は3月に発売されたJAZZ THE BESTシリーズから、ジョーヘンことジョー・ヘンダーソンの「ラッシュ・ライフ」を紹介したいと思います。ジョーヘンと言えば1960年代にジャズ界を席捲した“新主流派”の中心的人物として、主にブルーノートに多くの録音を残しています。リーダー作の「ページ・ワン」「インナー・アージ」あたりは日本のジャズファンにもお馴染みですね。新主流派特有のモーダルな演奏だけでなく、正当派ハードバップ、ジャズロック、ソウルジャズ、フリージャズと何でもこなすオールラウンドプレイヤーであり、60年代のジャズシーンにおける最重要人物の一人と言えるのではないでしょうか?
本作はそこからぐっと時代が下って1991年の録音。かつては新進気鋭のジャズマンだった彼も54歳のベテランとなり、角の取れた円熟の境地とも言える演奏を聴かせてくれます。共演は若手のミュージシャンばかりで、トランペットのウィントン・マルサリス、ピアノのスティーブン・スコット、ベースのクリスチャン・マクブライド、ドラムのグレゴリー・ハッチンソンという顔ぶれです。
上記の顔ぶれでやはり目を引くのが当代随一のトランペッター、ウィントン・マルサリスの参加ではないでしょうか?ただ、残念なことに彼の参加したのは10曲中3曲しかないんですね。後は曲ごとに違うフォーマットでテナー+リズムセクションのカルテット、ピアノレスのトリオ、ドラムレスのトリオ、さらにピアノ、ベース、ドラムと組んだデュオが1曲ずつ、締めがテナーソロです。きっといろんな編成でジョーヘンのテナー表現の可能性を追求したのでしょうね。
ただ、保守的なスタイルが好きな私としてはやはりオーソドックスなリズムセクション入りが一番安心して聴けます。特にウィントン入りの3曲はどれも良いです。エネルギッシュな“Johnny Come Lately”、叙情的なバラード“A Flower Is A Lovesome Thing”、スインギーな“Upper Manhattan Medical Group”とどれも名演です。カルテットの“Blood Count”も美しいバラードですね。他ではベースとのデュオ“Isfahan”、ドラムレスのトリオ“Drawing Room Blues”あたりも味のある演奏です。