ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ドヴォルザーク/スターバト・マーテル

2012-05-12 08:23:23 | クラシック(声楽)

本日はドヴォルザークの声楽曲「スターバト・マーテル」を紹介します。「スターバト・マーテル」とはラテン語で“悲しみの聖母”という意味で、磔にされたイエス・キリストを聖母マリアが嘆き悲しむ様子を歌にしたものです。歌詞はあらかじめ決まっていて、後は作曲家がメロディを付けるという形式です。古くから多くの作曲家がこの「スターバト・マーテル」に取り組んでいますが、バロック時代のペルゴレージ、ロマン派時代のロッシーニと並んで、このドヴォルザークの作品が有名です。ドヴォルザーク自身のキャリアではわりと初期の作品で、彼が30代後半に書かれた作品だそうです。

曲はさすがに宗教音楽だけあって敬虔な雰囲気に満ちあふれています。なので「新世界」やチェロ協奏曲あたりのドラマチックさを求めて聞くと肩透かしを食らうかもしれません。悲しみをテーマにした曲だけあって、特に前半部は暗く重々しい雰囲気で始まります。特に第2曲「キリストの御母の」のアルト独唱、第4曲「わが心をして」のバス独唱あたりは重々しいですね。ところが第5曲「わがためにかく傷つけられ」あたりからはドヴォルザークらしい親しみある旋律が出てくるようになります。この流れは第8曲「われにキリストの死を負わしめ」まで続きます。第9曲「聖なる童貞女よ」のアルト独唱から再び哀愁を帯びた旋律が中心となり、最終曲「肉身は死して朽つるとも」でクライマックスを迎えます。最後の壮大な合唱が聴きモノです。



CDはマルティン・トゥルノフスキー指揮群馬交響楽団のものを買いました。クーベリックのCDも有名ですが、あちらはハイドンのミサ曲も入った2枚組なのに対し、こちらは「スターバト・マーテル」のみで1枚のCDに収まっているのが魅力です。群馬交響楽団は文字通り群馬県の地方オケですが、日本を代表する指揮者である高関健を長く常任指揮者に迎え、非常にレベルの高いオケとして知られています。この「スターバト・マーテル」では指揮者のトゥルノフスキーはじめ4人の独唱も全てチェコ人を迎え、ドヴォルザークの世界を見事に再現しています。

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