ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

カーティス・カウンス/ユー・ゲット・モア・バウンス

2024-10-08 21:09:14 | ジャズ(ハードバップ)

ジャズのジャケットには色々ヘンテコなものがありますが、その中でもお色気系の代表格が今日ご紹介する1枚です。白衣を着た女医らしき金髪美女が胸に聴診器を当ててアッハ〜ンと声を出しているのでしょうか?まるで成人向け漫画のカバーみたいで、ハレンチ極まりないですね。

ただ、内容はいたって正統派のジャズです。リーダーはカーティス・カウンス。西海岸で活躍した黒人ベーシストでチェット・ベイカー「ピクチャー・オヴ・ヒース」、ショーティ・ロジャース「スウィンギング・ミスター・ロジャース」はじめ数々のウェストコースト・ジャズの名盤に参加しています。リーダー作も何作かあり、本作は1956年から1957年にかけて名門コンテンポラリー・レコードに吹き込まれた作品。メンバーはジャック・シェルドン(トランペット)、ハロルド・ランド(テナー)、カール・パーキンス(ピアノ)、フランク・バトラー(ドラム)。シェルドンだけが白人で、それ以外は西海岸で活躍する黒人ジャズマン達です。従ってウェストコースト・ジャズとは少し違う西海岸ハードバップとでも言うべきジャズが繰り広げられています。

全8曲。オリジナル2曲、歌モノスタンダード4曲、バップスタンダード2曲と言う構成です。オープニングはカウンス作のレイジーな雰囲気のブルース"Complete"で、カウンスのウォーキングベースをバックに、まずシェルドンのミュートトランペットが絡み、ランド、パーキンスがソロを取って行きます。2曲目以降は歌モノで、ランドのワンホーンによるバラード"How Deep Is The Ocean?"、メル・トーメやアート・ペッパーで有名な"Too Close For Comfort"、ドライブ感満点のハードバピッシュな"Mean To Me"と続きますが、イチ押しは5曲目の"Stranger In Paradise"。原曲はボロディンの「だったん人の踊り」で、それを「キスメット」というミュージカルのために編曲したものです。元々のクラシック曲が名曲ですが、本作での演奏も素晴らしく、ランドの歌心溢れるテナー、ややくすんだ音色のシェルドンのトランペット、パーキンスのエレガントなピアノソロがさらに曲の魅力を引き立てています。

6曲目"Counceltation"はモードジャズを先取りしたかのようなやや不思議な旋律のバラード。ラストの2曲はチャーリー・パーカーの"Big Foot"とディジー・ガレスピーの"Woody'n You"とビバップの2大巨人の名曲を軽快に演奏して終わります。前者ではカウンスの長めのベースソロもフィーチャーされています。結局、カウンスはコンテンポラリーに4枚、ドゥートーンに1枚「エクスプローリング・ザ・フューチャー」を残しますが、1963年に37歳の若さで心臓発作で亡くなります。本作の翌年に事故死するカール・パーキンスと言い、この頃のジャズマンは本当に早死にが多いですね。

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