ミルト・ジャクソンについては、本ブログでもたびたび取り上げてきました。モダン・ジャズ・カルテット(MJQ)のヴァイブ奏者として長年活動するとともに、ソロでも多くのリーダー作を発表しています。MJQとソロでは音楽性がかなり違い、ジョン・ルイスの影響が濃い室内楽的サウンドのMJQに対し、自身名義の作品ではファンキー&ブルージーな要素を前面に出しており、編成もホーン入りが多いです。
ただ、例外的にMJQと同じカルテット編成の作品もいくつかあり、有名なのはジョン・ルイスの代わりにホレス・シルヴァーがピアノを務めた1955年のプレスティッジ盤「ミルト・ジャクソン・カルテット」ですが、今日ご紹介する1961年のインパルス盤「ステイトメンツ」も忘れてはいけません。メンバーはハンク・ジョーンズ(ピアノ)、ポール・チェンバース(ベース)、コニー・ケイ(ドラム)と言った面々。いずれも名手揃いですが、ハンク・ジョーンズは良くも悪くも個性を前面に出さない職人肌タイプですし、全編においてMJQとは異なるミルトならではのソウルフルなサウンドが繰り広げられています。
全8曲。注目すべきはやはり4曲のミルトのオリジナルでしょう。オープニングトラックの”Statement”、3曲目の”A Thrill From The Blues”、5曲目”Put Off”とどの曲もミルトが縦横無尽のマレット捌きを見せつけるファンキーチューンです。ミルトのヴァイブは技術的に卓越しているのはもちろんですが、音の選び方が独特なんですよね。黒人特有のソウルフィーリングが体中から溢れ出てくるような感じと言いますか。ちょっと他のヴァイブ奏者では真似のできない領域です。
一方でミルトはバラードも得意中の得意で、スタンダード曲の”Slowly””The Bad And The Beautiful”、そして自作の”A Beautiful Romance”とうっとりするようなロマンチックな演奏を聴かせてくれます。ソニー・ロリンズの”Sonnymoon For Two”やデューク・エリントン”Paris Blues”と他のジャズマンのカバーも悪くないです。リズムセクションは決して目立つわけではありませんが、いつもながら良い仕事をするベテランのハンク・ジョーンズに、安定のポール・チェンバース、そしてMJQの時と変わらず息の合ったプレイを聴かせるコニー・ケイがミルトをがっちりサポートしています。