本日はジャッキー・マクリーンのプレスティッジ盤「ジャッキー・マクリーン&カンパニー」をご紹介します。カンパニーは会社という意味で使われることが多いですが、仲間と言う意味もあり、ここでは後者でしょうね。録音年月日は1957年2月4日。メンバーはジャケット写真下から順番にビル・ハードマン(トランペット)、マクリーン、アート・テイラー(ドラム)、マル・ウォルドロン(ピアノ)、レイ・ドレイパー(チューバ)です。ジャケ写にはなぜか写っていませんが、ベースのタグ・ワトキンスも参加しています。
ジャケットで目を引くのが何と言っても巨大なチューバを抱えるレイ・ドレイパーですね。チューバは重低音担当として、オーケストラやビッグバンドでは欠かせない楽器ですが、スモールコンボでは非常に珍しく、おそらくソロ奏者として活躍したのはこのドレイパーくらいではないでしょうか?チューバ奏者には他にビル・バーバーやドン・バターフィールド等がいますが、彼らは基本ソロは取りませんし、リーダー作もありません。このドレイパーはプレスティッジに2枚、ジュビリーに1枚リーダー作を残しており、うち2枚はジョン・コルトレーンも参加していることもあってCDでも再発売されています。
全5曲、うち最初の3曲がチューバ入りで、残りの2曲は2管のクインテットです。曲は全てメンバーのオリジナルで、マイナーキーの曲がずらりと並んでいます。1曲目”Flickers”はマル・ウォルドロン作で前年にマルが参加したプレスティッジ・オールスターズの「オール・ナイト・ロング」収録曲です。やや哀調を感じさせる魅力的な旋律でマクリーン→ハードマンがソロを取った後、チューバが登場し♪ブォ~ボッボボとゾウの鳴き声のような独特の音でソロを奏でます。このチューバ演奏がテクニック的にどうなのかそもそも比較対象がないのでよくわかりませんが、お世辞にも耳に心地良い音とは言えず、結局ドレイパーに続くソロチューバ奏者が現れなかったのも納得です。続くダグ・ワトキンス作”Help”も地の底から湧き上がるようなドレイパーのチューバに導かれるように始まる曲ですが、ちとマイナーを通り越して暗すぎですね。3曲目”Minor Dream”はドレイパー作のハードバップで、ソロ1番手で張り切ってチューバソロを披露しますが、やはりちょっとヘンですよね。曲自体は良く、ドレイパーの後はハードマン→マクリーン→マルが快適にソロをリレーします。
4曲目以降はチューバなしの普通のハードバップです。”Beau Jack”はマクリーン作のマイナーキーのハードバップで、この時代のマクリーンにしか出せないB級感溢れるマクリーン節が堪能できます。続くハードマンの一音一音区切っていくような独特のトランペットソロも曲風に良くマッチしています。この頃のマクリーンとハードマンはジャズ・メッセンジャーズでも同僚でしたし、「ジャッキーズ・パル」等マクリーンのリーダー作でも共演していますので息もピッタリですね。ラストの”Mirage”はマル・ウォルドロン作の美しいバラードですが、どこかで聴いたことがある曲。いろいろ記憶の引き出しを探ってみるとセロニアス・モンクの”Ruby, My Dear”と出だしがそっくりです。全体的な雰囲気はマルの名曲”Soul Eyes”にも似ていますね。この曲はマクリーンとハードマンが参加したジャズ・メッセンジャーズ「ミッドナイト・セッション」にも収録されています。以上、レイ・ドレイパーのチューバをどう評価するかは難しいところですが、作品自体は愛すべきB級ハードバップと思います。