ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ジャッキー・マクリーン/デモンズ・ダンス

2024-10-17 20:45:57 | ジャズ(モード~新主流派)

ジャッキー・マクリーンについては当ブログでもたびたび取り上げてきました。50年代のプレスティッジ時代も良いですが、1959年にブルーノートに移籍して以降も「カプチン・スウィング」「ア・フィックル・ソーナンス」等の名盤を残しています。ただ、1962年の「レット・フリーダム・リング」以降はそれまでのハードバップを捨て、フリージャズ路線の作品を次々と発表します。この頃の作品には「ワン・ステップ・ビヨンド」「デスティネイション・アウト」等がありますが、個人的にはフリー系が苦手なのでちょっとパスって感じですね。

ただ、1967年末に吹き込まれたマクリーンのブルーノート最後の作品「デモンズ・ダンス」は一連のフリー路線から少し揺り戻しのようなものがあったのか、比較的聴きやすい作品です。とは言え、50年代のようなハードバップまで戻ったわけではなく、その手前のモードジャズくらいですかね。メンバーもウディ・ショー(トランペット)、ラモント・ジョンソン(ピアノ)、スコッティ・ホルト(ベース)、ジャック・デジョネット(ドラム)と言ったポスト・バップ世代が脇を固めています。

それにしても強烈なのはこのジャケット!3人の黒人女性の顔に、妖怪みたいなのが3匹、その下には無数の乳房のようなものが・・・描いたのはマティ・クラーヴァインというドイツの芸術家らしく、他にはマイルス・デイヴィスの「ビッチェズ・ブリュー」やサンタナの「アブラクサス(天の守護神)」も手掛けたそうですが、言われてみれれば確かに同じようなテイストかも。ブルーノートも60年代中盤以降はサイケなデザインのジャケットが増えてきますが、その中でもこれは群を抜いてインパクトがあります。個人的な好みを言えばあまり好きではありませんが、まあ印象に残るっちゃ残る・・・

全6曲、全てオリジナル曲で、マクリーンとウディ・ショー、そしてフィラデルフィア出身の作曲家カル・マッセイの曲が2曲ずつです。オープニングはマクリーン作のタイトルトラック"Demon's Dance"。ラモント・ジョンソンの飛翔感たっぷりのピアノ &ジャック・デジョネットの激しいドラミングをバックにマクリーン& ショーがエネルギッシュなソロを展開します。マクリーンのもう1曲のオリジナルは5曲目の”Floogeh"。何と読むのかわかりませんが、こちらはフリーとまでは行きませんがアグレッシブな曲ですね。

ウディ・ショーの2曲のうち3曲目”Boo Ann's Grand"はフリー路線の名残を感じるような曲ですが、4曲目”Sweet Love Of Mine"は一転して超メロディアスな曲です。当時流行のボサノバのリズムを取り入れた曲で、思わず歌詞を付けて歌いたくなるようなキャッチーなメロディです。ただ、演奏の方は結構ホットでマクリーン→ショー→ジョンソンと熱のこもったソロをリレーします。名曲が少ないと言われる60年代後半のジャズシーンでは屈指の名曲・名演ではないでしょうか?

カル・マッセイの2曲も捨てがたいです。彼は本職はトランぺッターだったようですが、むしろ作曲者として有名で、同じフィラデルフィア出身のリー・モーガンやジョン・コルトレーンに多くの曲を提供しています。2曲目”Toyland"は実に穏やかで優しいメロディのバラード。ウディ・ショーはお休みで、マクリーンとジョンソンがリリカルなプレイを見せます。ラストトラックの”Message From Trane"は半年前に亡くなった旧友のコルトレーンに捧げた曲で、モードジャズ時代のコルトレーンを彷彿とさせるようなナンバーで、マクリーン&ショーの疾走感たっぷりのソロにラモント・ジョンソンもマッコイ・タイナーっぽいプレイを聴かせます。以上、おどろおどろしいジャケットと"悪魔の踊り"を意味するタイトルの割には意外と普通に聴けるジャズです。

 

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