ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ザ・マグニフィセント・サド・ジョーンズ

2024-10-02 18:53:30 | ジャズ(ハードバップ)

前回の「レイ・ブライアント・トリオ」に引き続き、本日もド定番でサド・ジョーンズのブルーノート盤、通称”鳩のジョーンズ”を取り上げたいと思います。ジャケットに鳩がたくさん写っているという他愛ない理由でそう呼ばれているのですが、それだけ昔からジャズファンに親しまれていた証左でもあります。サドはブルーノートに合計3枚のアルバムを残しており、1作目がデトロイト出身者を中心にした「デトロイト・ニューヨーク・ジャンクション」、2作目が1956年7月録音の本作です。

メンバーはビリー・ミッチェル(テナー)、バリー・ハリス(ピアノ)、パーシー・ヒース(ベース)、マックス・ローチ(ドラム)からなるクインテット。ミッチェルとは上述「デトロイト・ニューヨーク・ジャンクション」に続く共演で、後にカウント・ベイシー楽団でも同僚となるなどサドとは長年の盟友のような関係です。バリー・ハリスもデトロイト出身ですが、実は彼が本格的にニューヨークに出て来て活躍し始めるのは1960年になってからで、この頃は一時的にデトロイトを離れていただけのようです。ただ、その数ヶ月の間に本作はじめアート・ファーマー、ハンク・モブレーの作品に呼ばれていますので当時から評価は高かったのでしょう。

全5曲、スタンダードが3曲、サドのオリジナルが2曲と言う構成です。オープニングは前年にベイシー楽団が大ヒットさせ、サドもソロを吹いている"April In Paris"。ビッグバンドのような迫力はありませんが、スモールコンボならではのほのぼのした雰囲気が良いですね。2曲目"Billie-Doo"はサド自作のブルース。Billieとはビリー・ミッチェルのことでしょうか?乾いた感じのサドのトランペットに続き、ミッチェルがブルージーなテナーソロを聴かせます。3曲目”If I Love Again"はクリフォード・ブラウン=マックス・ローチ・クインテット「スタディ・イン・ブラウン」のバージョンがあまりにも有名なスタンダード曲ですが、ここでの演奏も双璧をなすぐらい素晴らしいですね。ソロ1番手はハリスでコロコロと玉を転がすようなタッチの軽やかなソロを聴かせ、ミッチェル→サドとそれぞれ持ち味を出し、他の曲では比較的おとなしめなマックス・ローチが見事なドラムソロを披露します。

4曲目”If Someone Had Told Me"はあまり聴いたことのないスタンダード曲。ここではミッチェルはお休みで、サドがワンホーンで情熱的なバラードプレイを聴かせます。5曲目”Thedia"は再びサドのオリジナル曲。本作は全体的に中間派風の演奏が多いですが、この曲は典型的ハードバップですね。10分超の長尺ということもあり、各自のソロがたっぷりフィーチャーされており、ミッチェルのよく歌うテナー→ハリスの玉転がしタッチ→パーシー・ヒースのベース→サドのブリリアントなトランペット→サドとローチのドラムのソロ交換とリレーして行きます。以上、リーダーのサドはもちろんのこと、過小評価されている名手ビリー・ミッチェルや若きバリー・ハリスの演奏も楽しめる評判通りの名作です。

 

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