本日は白人ヴァイブ奏者のテリー・ギブスをご紹介します。と言われてもあまりピンと来ない方も多いかもしれません。日本のジャズファンの間ではヴァイブ奏者と言えば何と言ってもミルト・ジャクソンが唯一無二の帝王的存在で、それ以前のスイング時代だとライオネル・ハンプトン、モードジャズ以降だとボビー・ハッチャーソンやゲイリー・バートンあたりがポピュラーな存在でしょうか?
ただ、このテリー・ギブスは本国では結構人気があったようで、50~60年代だけでもサヴォイやエマーシーを中心に30枚以上のリーダー作を残しています。残念ながらほとんどCD化されていないので私も一部しか聴いたことはないですが・・・youtubeでTerry Gibbsで検索すると「トゥナイト・ショー」に出演した際の映像が見れるので、そちらが結構おススメです。女流ピアノ/ヴァイブ奏者のテリー・ポラードと一緒に出演していて、2人で1台のヴァイブを叩く様子がコミカルで面白いです。
本作「テイク・イット・フロム・ミー」は1964年1月にインパルス・レコードに吹き込まれたもので、15年ほど前にCDでリリースされたインパルスの再発売シリーズの中の1枚です。このアルバム、メンバーが結構豪華です。ケニー・バレル(ギター)、サム・ジョーンズ(ベース)、ルイス・ヘイズ(ドラム)とバリバリのハードバップ寄りの人選で、ギブスのキャリアを考えると異色のメンバーと言えます。
全8曲入りで、最後の2曲にジェローム・カーン”All The Things You Are"、ファッツ・ウォーラー”Honeysuckle Rose"と有名スタンダードが2曲ありますが、ぶっちゃけ特筆すべき内容ではありません。聴くべきはギブスが書いたオリジナル曲の方ですね。オープニングはタイトルトラックの”Take It From Me"で、リラックスしたムードの佳曲です。品の良いギブスのヴァイヴの後に絡むバレルのソウルフルなギターが最高です。
続く”El Fatso"はややラテンっぽい明るい感じで、その後哀調溢れる”Oge"、ハッピーな感じの”Pauline's Place"、ブルージーな"8 LBS., 10 OZS."と2~3分前後の軽めの曲が続きます。6曲目は本作のもう一つのハイライトである"Gee, Dad, It's A Degan"。6分を超える曲でのっけからギブスが迫力満点の高速マレット捌きを見せ、バレルもファンキーなギターソロで後に続きます。一風変わったタイトルの曲が多いですが、内容はリラックスして聴ける隠れた好盤です。インパルスは何と言ってもコルトレーンの前衛時代の作品群が有名ですが、意外とスイング~クールジャズ系のジャズメンの作品も多く、内容も捨て難いんですよね。