広く浅く

秋田市を中心に青森県津軽・動植物・旅行記などをご紹介します。

2つの昼顔

2015-06-21 23:03:02 | 動物・植物
東北地方北部は平年日の6月14日を1週間過ぎても、まだ梅雨入りしない。たまに雨は降るもののおおむね晴天の暑い日が続いている。
そんな中、植物は季節を追って花を咲かせていて、秋田市ではタチアオイやアジサイなどとともにヒルガオが咲いてきた。

今回は、そのヒルガオのお話。※前回の記事と同じくドラマのタイトル(昨年の「昼顔」)じゃありません。
まず、一般の人のヒルガオという植物の認知度はどの程度なんだろうか?
雑草として目にする機会は少なくないはずだが、特に花はアサガオ(同科別属)とよく似ているため、混同している人もいそうだ。
大雑把に言うと、花色はピンクだけで、昼になっても花が咲いているのがヒルガオ。(ただし、西洋アサガオのピンク系の可能性もなくはない)
ちなみに、ユウガオはカンピョウの原料になるウリ科植物。アサガオ、ヒルガオ、ヨルガオはヒルガオ科。

実は、日本で広く見られるヒルガオには「ヒルガオ」と「ハマヒルガオ」の2種が存在する。
砂浜など海辺の環境に適応した植物には、「ハマ(浜)~」という標準和名が与えられ、分類学的にも近縁であることがある。ハマナデシコ、ハマヨモギなどは、ハマが付かないナデシコやヨモギが海辺の環境(乾燥や塩)に適応した種と考えることができよう。ハマヒルガオとヒルガオも同様。


さて、秋田市内で咲くヒルガオ。※以前の記事
浜辺では、ハマヒルガオオンリーであろう。砂地で塩分が多い厳しい環境では、ヒルガオは生育できないはずだし、だからこそ、ハマヒルガオが分化したはずだから。

では、秋田市中央部。テニスコートのネットにからまるヒルガオ。
 
アサガオとよく似ていて見間違うけれど、これが「ヒルガオ」。葉がアサガオよりも細長い(厚さはやや薄いか?)。
一年草であるアサガオと異なり冬を越して生長し続ける多年草(宿根草)。種よりも地下茎で増え、畑の雑草として嫌われる。
別名は「畑アサガオ」「雨降り花」などだそうだけど、「雨降り花」の由来はなんだろう?


そして、
道端の街路樹の根元に広がって咲く
上のヒルガオより花色が濃く、咲き始める時期がやや早い。
生育条件が良いだけかもしれないが、上のヒルガオより心持ち花が大きい
何よりも葉が違う。丸くて、緑色が濃くて、テカテカしている。
そう。これが「ハマヒルガオ」。こちらも多年草で、世界中の海辺で見られる。
図鑑によってはハマヒルガオが浜辺だけに分布するとしているものもあるが、実際には少なくとも日本では内陸部の湖畔・河畔などにも生育するそうだ。

アサガオやヒルガオと同じく、ハマヒルガオも物にツルを巻きつけることはできるが、それよりも地面をはうことのほうが得意そう。
浜辺の環境では巻きつく物がないのは当然だけど、街中でも、
フェンスがあるのにあまり巻き付かず、こちら側にはって来ている
この性質のおかげで、巻きつく物がない空き地などではかえって有利なのかもしれない。さらに、地面一面に濃い緑の葉と濃いピンクの花が広がっていることがあり、見る分にはきれい。

秋田市中央部では、ヒルガオよりハマヒルガオのほうが多く分布している印象がある。おそらく過半数を占めている。
僕は街中でハマヒルガオを見ても違和感がないので、昔からハマヒルガオを見慣れている=昔から生育していたのだと思う。


街中に咲くハマヒルガオ
往年のヒットドラマ「君の名は」の主題歌(作詞:菊田一夫。1991年版では歌:石川さゆり)で「♪今日砂山にただひとり来て 浜昼顔にきいてみる」とあるように、それなりに認知されている種名だとは思うけれど、まさか街中にハマヒルガオがあるもんかと思われるのか、これがそのハマヒルガオだとは思いもしない人が多いことだろう。
ハマヒルガオは、本来の生育地である海辺では、外来種のコマツヨイグサと競合して押され気味だという。ハマヒルガオの新たな居場所が、空き地が増えた街中なのかもしれない。

秋田市内でも山間部や農村部では、ヒルガオのほうが優勢なのかもしれないし、他の町ではどうなっているでしょうか。

※アサガオは日が短くなるとつぼみ(花芽)ができる短日植物(仕組みとしては暗い時間に反応するのでほんとうは“長夜植物”)。一方、ヒルガオやハマヒルガオは今、既に咲いているということは、明暗の感受性が鈍感なのか、関係ないのか、アサガオとは花芽形成のメカニズムが多少違うのだろう。

【2015年7月31日追記】その後、梅雨末期になるとハマヒルガオの花は見なくなり(葉は引き続き茂っている)、ヒルガオの花を6月よりもよく見るようになった。両種で花の時期がずれているようだ。(それでも、分布としてはハマヒルガオのほうが多い)
コメント
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