昨日に続いて弘前。
訪れた3連休中は、中心部でさまざまなイベントが開催されていた。主催者が違うとはいえ、ごちゃごちゃして分からない状態。弘前市が所管するものであっても、ホームページが分散しているし。まとめて紹介するホームページ(リンク集とかポータルサイト)などがあってもいいと思ってしまう。
土手町の商店街周辺では、青年会議所主催の音楽イベント「Cross.s(クロスエス)」や、弘前市による「
ライド・トゥー・パーク社会実験」が行われていた。この記事は、ライド・トゥー・パークについて。
告知看板
簡単に言えば、土手町を一般の車が入れないトランジットモールにし、同時に駐車場開放、貸し自転車やバスの無料化などを行うもの。
昨年も行われた。
弘前市都市政策課のホームページには、「中心市街地の回遊性の向上や安全で快適な歩行者・自転車空間の創出を図るため、トランジットモールなどを活用した社会実験を行います。」「この実験に多くの人が参加することで、歩いて暮らせるコンパクトなまちづくりへの転換の必要性を認識するきっかけになればと考えています。」とある。
今年は10月20日、27日、11月3日(以上、日曜日)と4日(振替休日)に実施。
トランジットモールとなるのは、普段は一方通行2車線である土手町のうち、中土手町のまちなか情報センター前(都市計画道路3・3・2号線)交差点から下土手町のスクランブル交差点まで。土淵川にかかる蓬莱橋や中三の前を通る約400メートル。
トランジットモールの実施は、10時から16時(交通規制は9時から17時)。路線バスと区間内で客を降ろすタクシー(乗せることはできず、降ろすのは指定の場所)は通行できる。
普段は車道として使われる部分をどう使うかは、10月と11月で異なる。
弘前市のチラシより抜粋・再レイアウト
10月は車道の真ん中をバスが走ったようで、バスに乗り降りする人は大変そう。11月はバス停のある側がバスレーンなのでいつもと変わらない。
南東端の3・3・2号線との交差点には、誘導員が配置されていた
こんな区分け
この日は、車の進行方向で左側から いつもの歩道・
バス・自転車(方向で車線区分)・賑わい空間(出店エリア)・いつもの歩道 の区分け。
沿道のお店などが歩道や「賑わい空間」に出店を出しているところもあったが、多くはない。パラソル付きのテーブルと椅子が置かれ、それは単なる休憩スペースという気もしたが、座る人も多くはない。
天気予報が雨模様(実際には降らず)だったこともあってか、思ったほど人出は多くなかった。音楽イベントにはたくさんいたようだけど。
トランジットモールの途中では、バス用に信号機は稼働。しかし、ほとんど誘導員が配置されていないし、目立つ表示もないので、バスが通らない時は単なる歩行者天国に見えてしまう。「どこを歩けばいいの?」と戸惑って、バスレーン部分を歩いてしまい、沿道の店のお父さんに「そこじゃないよ。こっちだよ」と指摘される人も。
「歩いて暮らせるコンパクトなまちづくりへの転換の必要性を認識するきっかけになれば」という意図ならこれでいいのかもしれないが、4日間もかけて行うほどでもないようにも思えた。やるならもうちょっと工夫できそうにも思う。
バスは通常よりゆっくりと走行
上の写真の大秋(たいあき)行きのバスを見れば分かるが、バスの通行帯は車道の端ギリギリ。
だから、どうしても路肩の側溝のフタ(グレーチング)を踏んで走行せざるを得ない。「カタンカタン」というような、まるで列車のような賑やかな音を立ててバスが走り抜けていった。(小型バスならなんとか踏まずに走行できたようだ)
弘前市中心部での移動といえば「土手町循環100円バス」。10分間隔で運行されていて、便利。
昨年のライド・トゥー・パーク社会実験では、この100円バスが無料開放された(他のイベントとの関連もあったのか?)。
今年はやり方が変わり、土手町循環は通常運行で、別に無料の循環バスが別コースで運行された。僕は今回、この無料バスをありがたく利用させてもらい、タダで弘前公園まで往復できた。
無料循環バスは10時から17時まで片方向のみ20分間隔で運行。(実際には弘前駅発10時00分から16時20分まで計20本)
経路と全停留所は、
弘前駅前→土手町十文字→中土手町→蓬莱橋→下土手町→市民中央広場→市役所→下土手町入口→中央弘前駅前→まちなか情報センター前→並木通りバスターミナル前→ヒロロ前→弘前駅前
駅から下土手町までは、通常の土手町循環と同じ経路だが、トランジットモール区間より手前の各停留所(上土手町とか市立病院前)は土手町十文字以外は通過。土手町循環と同じく、スクランブル交差点の先の坂の途中の下土手町は通過。
下土手町から先はこの無料循環バスだけの独自ルートで、停留所も臨時に設置(下線の区間)された。
市役所まで行ったら、弘前駅へ戻ってくることになるが、帰り道は複雑で意外なルート。後半は土手町循環と同じ道ではあるが、停留所は並木通りバスターミナル前まではすべて通過。
といったように、土手町循環と重複しそうでいてさほど重複しないものの、駅-土手町-市役所・弘前公園という、利用が多そうな区間では競合してしまう。
土手町循環バスの客を奪ってしまわないか、それによって無料循環バスが混雑しないか、心配に思えた。
無料循環バスは、当然といえば当然だが弘南バスに委託して運行。秋田などのイオンモール送迎バスと同じく、無料バスと競合する路線バスを同じバス会社が運行しているわけで、弘南バスにしてみれば複雑な心境かも。
この日は、弘前営業所の3台の日野リエッセ「50803-2」「50909-2」「51102-2」が充当されたようだ。
秋田市大森山動物園の広告がある「51102-2」も活躍
※「51102-2」は、正面のヘッドライトの間に社名などを表示する「行灯」を設置できそうな溝がある(他の車両にはない)。内装は他の車両と同じだから、どこかの中古というわけではない。バンパーを交換した時に、在庫があった部材を付けたのだろうか。
弘前駅前は4番乗り場発。
利用状況の調査と案内を兼ねたようなスタッフが1名配置されていたが、旅行客など戸惑っている人もいたようだ。
危惧していた、土手町循環との客の奪い合いはあまりなかったようで、どちらもほどほどのお客。10分間隔でバス停が多い、使い慣れた土手町循環を選ぶ人も多かったようだ。
僕が無料循環バスを利用したのは、中土手町から市役所までと、市役所から並木通りバスターミナル前まで。
どちらも10人前後(若干の空席がある程度)の客数。秋田市中心市街地循環バスといい勝負もしくは若干優位といったところだろうか。
地元の人らしき人も、地図を手にした観光客もいて、いろんな人に利用されていた。しかし、バス停で無料バスを見て戸惑う人も、地元の人と観光客両方がいた。つまり、知っている人は知っていて、知らない人は知らない状況であり、これは周知不足ということではないだろうか。
黄色い表示はあるが、小さくて目立たないかも
整理券はなく、運賃表示機は消灯。降車した乗客の数は、運転士が紙に記録していたようだ。整理券を使えば、乗ったバス停と人数は集計できるのに。
運賃箱はむき出しなので、100円玉を入れそうになったおばあさんがいたり、降車時は手で投入口を塞ぐ運転士がいたりした。カバーを掛けるとか、紙でフタでも作ればいいのに。
感心したのは、車内放送が通常の路線と同じスタイルで流れたこと。(始発や終点は乗らなかったので不明)臨時バス停の分も、いつもと同じナレーターで収録したことになる。
車内に路線図が掲出されていないのは、不親切。
トランジットモール区間を過ぎて、土手町循環では左折して本町、大学病院を遠回りして市役所前を目指す所を、無料循環バスは直進してお堀端へ進む。途中、「市民中央広場(放送では「前」が付いていたような?)」という停留所が中央交番の向かい付近に設置。(交番側には「桜大通り」というバス停が常設されているが、何線が使うんだ?【2018年9月26日追記】バスターミナルから遠回りして市役所前を通って桜ヶ丘へ行く緑ヶ丘線がここを通るのだった。)
土手町循環のルートを逆走して外堀沿いを走り、「次は市役所」と放送が入る。土手町循環では「市役所前」、一般路線バスは「市役所前・公園入口」とかいう名称。ズバリ「市役所」というからには、それらとは別の場所なんだろうか。それに、ここらで方向転換しないと弘前駅方面へは戻れないはずだけど、どうするんだ?
と思っていると、バスは弘前市役所の敷地へ入った!
庁舎西側の通用口みたいなののケヤキの木の所に臨時バス停が設けられていて、そこで降ろされた。
後方の桜並木が弘前公園の外堀
バスは駐車場のほうへ進み、工事中で一般車両は通れない部分を抜けて、道路へ戻っていった。
左の建物は移築された「旧第八師団長官舎」なのですが、
また後日
帰りは、土手町循環ほど遠回りではないものの、一方通行の関係と中央弘前駅へ寄る必要性からか、三次関数のグラフのような山と谷があるルート。バス停の数は少ない割に、時間はかかった気がした。
市役所を出て、しばらく行きの逆コース。土手町に突き当たる所で左折して上元寺町へ。すぐにサンクスの交差点を右折して、ホテルニューキャッスル前。さらにすぐ右折して、下土手町のスクランブル交差点へ。(ここまでバス停はない)
スクランブル交差点のすぐ手前に、やっと次の「下土手町入口」臨時停留所。
スクランブル交差点を直進して、朝日会館の前を過ぎて鍛冶町の歓楽街を走る。普段はバスが通らないから、非常に珍しい車窓。明治屋会館や薬局のある小さい交差点を左折して、中央弘前駅へ向かう。
ルネスアベニュー(ルネス街)への階段の所が「中央弘前駅前」臨時停留所。
弘南鉄道大鰐線の中央弘前駅は、JRや弘南鉄道弘南線の弘前駅とは離れている。
弘前の地理を知っている人には、歩いてもさほど遠くない距離であり、土手町循環バスの中土手町停留所もあるのだが、多くの旅行客は道が分かりづらい配置のこともあって「遠くて行きづらい」と感じるようだ。そういうこともあって、臨時循環バスを通してみたのだろうが、一方通行のせいもあって弘前駅までは遠回りになって、これなら歩いたほうがいいような気がしてしまった。
中央弘前駅を過ぎると、狭くてくねくねしたちょっとした坂を通る。中型バスで通るのは厳しそうなので、ここがネックで小型のリエッセが使われているのかもしれない。
3・3・2号線へ出て、「まちなか情報センター前」臨時停留所。中央弘前駅とここの間だけ、極端に停留所間隔が狭い。
あとは弘前郵便局の交差点を右折して、ヨーカドーでも右折して、並木通りバスターミナル前。
時刻表や実際に乗ったところでは、弘前駅から市役所まで13分、中央弘前駅まで21分、並木通りバスターミナル前まで30分程度。
土手町循環と比べると、時間的にはわずかに短い程度だけど、大学病院に出たり入ったりとかちまちましたのがなくて、気分的にはだいぶ早いような気がした。なんてったってタダだし。
ただ、土手町循環バスと共存させるのは非現実的。土手町循環の部分的な経路変更で対応していくことはあってもいいかもしれない。
ライド・トゥー・パーク社会実験は、ちょっと大げさな気もしなくはないが、弘前市のまちづくりに対する心意気は感じるイベントだと思った。秋田市も、これくらいできる、かな??