今週末はようやっと杉並演劇祭の実行委員らしく、本番に臨んだ集団をみっつ……
①10日(金)夜 風詠の会
『海と空のあいだに
~「苦界淨度土」「みなまた海のこえ」より』
ヴァーシティホール
②11日(土)昼 区民朗読劇
創作朗読劇『家族の肖像3』ほか
勤労福祉会館
③11日(土)夜 鬼灯を上演する会
二人芝居『鬼灯-ほおづき-』
勤労福祉会館
……観させていただきました。
タイトルからわかるように①は水俣病を、③は獄窓の歌人・島秋人と女学生・前坂和子の交流を、また②は区民公募の「家族について」のエッセーを構成した『家族について3』と野上弥生子原作の『笛』という、ともに家族に焦点を当てた二本立て……と、すべて社会性に富んだ舞台が並んだ。
偶然? むしろ参加団体の志の高さと考えたい。
さてこの3団体にはスタイルの類似もみられた。
②はズバリ朗読劇を謳ってはいるが、ワークショップでよく見られるウォーキングスペース(※1)を取り入れるなど動きのある演出、逆に①はテーブルで実際台本を開くシーンがあり、③は本こそ開かないが俳優二人が客観的説明(立位)と手紙(座位)をほぼ正面を向いたまま演じる…つまり朗読劇的というか、いわゆる小作品的な舞台だった。日常的な動きと台詞による、皆がイメージするような演劇ではなくだ。
さらにこれも小作品によくある生楽器とのコラボレーションを取り入れ、①はピアノやアコーディオン、②はピアノを使う演出だった…。
個別の作品について述べれば……
『海と空のあいだに~』は舞台美術が大変美しく、水俣問題を単なる社会告発に終わらせない意図を感じた! 水俣関係者の感情の吐露と客観的な社会情勢を明確に表現し分けることで舞台の足場がしっかりしていたのも印象深い。コントのよーな作品が多い中(※2)キラリと光る作品だった。
『家族の肖像3』『笛』は前述した通り、動きを取り入れた演出で飽きさせない舞台だった。リピーターと初参加のレベルの違いは見て取れたが、その成長段階がまた区民公募集団の醍醐味というもの。むしろ適材適所で良いハーモニーを産んでいた。とすれば、初心者には基本の「声」についてもっと時間を割いてあげても良かったか、と事情を知らない上で少し思ったりはした。
「声」という点で『鬼灯』は、小さな会議室に誂えた三畳ほどの空間に、死刑囚と女学生(のちに教師)の交流の時間を、二人の俳優が、劇中いくつも登場する“花”のように「セリフ」を見事に咲かせた舞台で、円熟さえ感じた。
杉並演劇祭の特色…といっても今年三回目でまだ模索の課程ではあるが……
Ⅰ)地元杉並に拠点を持つカンパニーに重きを置く
Ⅱ)会場を区内広域に置く
……の二点にあり、まさに「杉並区の演劇の祭典」を目指しているといえるわけである。大変面白い、かつ壮大な試みでもあるわけだが、それゆえに壁も高いと言える。そのあたりは・・・
<2へつづく>
※1=複数の(しかもある数的ボリュームをもった)人間
がそれぞれ勝手に、でも出来るだけぶつからない
ように歩く「空間把握」のワークショップ。
※2=決してコントを蔑んでいるのでも、またコントの
ような演劇を否定しているわけではない。ただ、
そればかりではつまらない。沢山の表現形態があ
って然るべきだし、その意味で少々偏っていると
は思う。
①10日(金)夜 風詠の会
『海と空のあいだに
~「苦界淨度土」「みなまた海のこえ」より』
ヴァーシティホール
②11日(土)昼 区民朗読劇
創作朗読劇『家族の肖像3』ほか
勤労福祉会館
③11日(土)夜 鬼灯を上演する会
二人芝居『鬼灯-ほおづき-』
勤労福祉会館
……観させていただきました。
タイトルからわかるように①は水俣病を、③は獄窓の歌人・島秋人と女学生・前坂和子の交流を、また②は区民公募の「家族について」のエッセーを構成した『家族について3』と野上弥生子原作の『笛』という、ともに家族に焦点を当てた二本立て……と、すべて社会性に富んだ舞台が並んだ。
偶然? むしろ参加団体の志の高さと考えたい。
さてこの3団体にはスタイルの類似もみられた。
②はズバリ朗読劇を謳ってはいるが、ワークショップでよく見られるウォーキングスペース(※1)を取り入れるなど動きのある演出、逆に①はテーブルで実際台本を開くシーンがあり、③は本こそ開かないが俳優二人が客観的説明(立位)と手紙(座位)をほぼ正面を向いたまま演じる…つまり朗読劇的というか、いわゆる小作品的な舞台だった。日常的な動きと台詞による、皆がイメージするような演劇ではなくだ。
さらにこれも小作品によくある生楽器とのコラボレーションを取り入れ、①はピアノやアコーディオン、②はピアノを使う演出だった…。
個別の作品について述べれば……
『海と空のあいだに~』は舞台美術が大変美しく、水俣問題を単なる社会告発に終わらせない意図を感じた! 水俣関係者の感情の吐露と客観的な社会情勢を明確に表現し分けることで舞台の足場がしっかりしていたのも印象深い。コントのよーな作品が多い中(※2)キラリと光る作品だった。
『家族の肖像3』『笛』は前述した通り、動きを取り入れた演出で飽きさせない舞台だった。リピーターと初参加のレベルの違いは見て取れたが、その成長段階がまた区民公募集団の醍醐味というもの。むしろ適材適所で良いハーモニーを産んでいた。とすれば、初心者には基本の「声」についてもっと時間を割いてあげても良かったか、と事情を知らない上で少し思ったりはした。
「声」という点で『鬼灯』は、小さな会議室に誂えた三畳ほどの空間に、死刑囚と女学生(のちに教師)の交流の時間を、二人の俳優が、劇中いくつも登場する“花”のように「セリフ」を見事に咲かせた舞台で、円熟さえ感じた。
杉並演劇祭の特色…といっても今年三回目でまだ模索の課程ではあるが……
Ⅰ)地元杉並に拠点を持つカンパニーに重きを置く
Ⅱ)会場を区内広域に置く
……の二点にあり、まさに「杉並区の演劇の祭典」を目指しているといえるわけである。大変面白い、かつ壮大な試みでもあるわけだが、それゆえに壁も高いと言える。そのあたりは・・・
<2へつづく>
※1=複数の(しかもある数的ボリュームをもった)人間
がそれぞれ勝手に、でも出来るだけぶつからない
ように歩く「空間把握」のワークショップ。
※2=決してコントを蔑んでいるのでも、またコントの
ような演劇を否定しているわけではない。ただ、
そればかりではつまらない。沢山の表現形態があ
って然るべきだし、その意味で少々偏っていると
は思う。