麒麟琳記〜敏腕Pの日々のつぶやき改題

還暦手前の身の回りのこまごま。
スポーツや映画演劇など。

田中さんの青空

2008年05月27日 | 鑑賞
 25日に幕を降ろした演劇集団円の『田中さんの青空』がメチャクチャ面白かった。
 僕が観たのは19日(月)。
                        【文中敬称略】

 土屋理敬のホンには大いに期待していた。
 期待のバーを走り高跳びの世界記録2M45に置いて観たが、軽々と超えてくれた。大袈裟でなく、6M14(棒高跳びの世界記録)をも、ポールを使わず背面跳びでひらりと超えたくらいのすごい舞台でした。


 実は助走の入り……芝居の冒頭は少々ココロモトナカッタのだが、スパイクが扇形の助走路を掴み始めると、ぐんぐんリズムに乗って、いわゆる起承転結の“承から転”にあたる、力強い踏切から、鮮やかな弧を描く空中姿勢は、一幅の絵画のような美しさで、心を釘付けにされたほどだ。

 普通に、演劇的に言えば、女優の一人芝居が重ねられ、それが最終的には収束する筋立てなのだが、その仕掛けが実に、実に、見事だった。
 しかも“演劇”だからこそ成立する仕掛けに脱帽ダ

 公演が終わったのでもっと突っ込んで書くと。。。
 舞台は、電車で痴漢を捕まえる女性(乙倉遙)の一人芝居から始まる。
 万引きして事務室に連れて来られた初老の婦人(山乃廣美)は、不在の店長のかわりに店を仕切るインド人ととぼけた会話をし、デパートの食堂にやって来たママ(林真里花)は、自分の子供を叱りつつ、ママ友達とも会話をし、さらには大声で店員を呼ぶ。産婦人科で診察を受ける女性(馬渡亜樹)は生まれてくる子供の名前を医師に相談。カラオケのパーティールームで、ぺこちゃんや田中さん達と楽しく談笑する女性(片桐静香)は、結果的には自分ばかり歌っている。

 そんな5人の女性のエピソードには必ず「田中さん」が登場する。まあ登場と言っても、一人芝居だから言葉として語られるわけダ。

 サクっと言い切ってしまえば、片岡演じるカラオケルームの女性がタイトルロール「田中さん」だと最後に判明する。
 さらには彼女だけは、まさにたった一人、寂しくパーティールームを借りて、本当の「一人芝居」を演じていたことが後半に明かされるのだが、これこそ“演劇ならでは”の、まずは一つの仕掛けであろう。

 さて、その他にも沢山たくさんトラップが仕掛けられている。
 例えば、カラオケのシークエンスでは、彼女が田中さんと呼びかけていた不在の人物こそが、学生の頃に親しく会話していた片腕のマネキンであり、そのカラクリの判明するまで、そっちの田中さん(=不在の田中さん)が、皆が話題にしている「田中さん」だと思わせる。。。なんてのが、全編に張り巡らされているのダ。
あ。長くなりすぎたので、明日に続きます
コメント
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