今は「あかり、ともるとき」展を
開催中の東京都庭園美術館が、
その前に竹久夢二をやっていた。
目黒駅から歩いてほどない場所。
駅から美術館までの道沿いには
フラッグが道標になっていて、
大概は表裏違うデザインの
1種類がはためいている。
だけれど。
さすが〈大正ロマン〉の雄
岡山に生まれ雑司ヶ谷霊園に眠る、
画家であり詩人の、本名茂次郎
(もじろう)は人気もあって、
予算も豊富だったのだろう
いつもの倍の4パターンが
ルートを飾っていた。
という枕から演劇の「チラシ」のこと。
若い世代はその響きに違和感があるのか
「フライヤー」を使いたがるが
いずれにしろ、創り手側は劇場に
一人でも多く足を運んでもらうべく
知恵をしぼる。
用いる写真は勿論、フォントや紙質
……紙の形そのものに変化をつけたりも。
デザインを同じテイストで続け、
「劇団」を印象づけるCI
(コーポレートアイデンティティ)の
方向から攻めたり……。
さて。
夢二の戦略を目にして思い出したのが、
やたら〈二種類のチラシ〉を作りたがる
制作者がいたこと。
確かに、Aという劇場で見たデザインと
Bで手にしたものが違うことで
フックになることはある。
そこに物語があったりすれば尚。
ただ。
そこには更に綿密な戦略が必須。
金額的には、二種類作ると倍掛かる
わけじゃないけれど、何でもかんでも
やりゃいいってもんじゃない。
と、当たり前だのクラッカー的な
能書きが本筋ではなく。
彼の勢いがオモシロかったという話。
新しさの中に懐かしさのある
夢二の美人画のように……。
まぁ、彼は故人ではなく、
現役バリバリなわけだけれど。
それから。
駅名は「目黒」だが、駅自体は
目黒区ではなく品川区にあって、
美術館の手前からは港区になり、
自然教育園も隣接した
都心とは思えない豊かな緑の、
ある意味不思議な空間が
・・・乱暴にみえて優しさに満ち、
予算や決算をサクッと作るのに、
受付の現金とチケット半券の数字が
なかなか合わない不思議な男と、
どこか似ていなくもない。