かつてイギリスの新聞街だったのが
「フリート・ストリート」である。
11日に初日を迎える俳優座『インク』の
主たる舞台もフリート街だ。
ロンドン初の日刊紙「デイリー・クラント」が
1702年、この街から発行されたことに始まり、
20世紀には全国的な通信社やその関連産業が
軒を並べることになった。
『インク』は、弊ブログでも既述のとおり、
主に1969年からの一年を描いているが、この頃、
世界最大部数を誇った「デイリー・ミラー」。
それに対抗すべく牙を剥く「ザ・サン」ともに、
フリート街には「ガーディアン」「タイムズ」
「デイリー・メール」等がしのぎを削っていた。
群雄割拠という見方をするなら、サンが蜀で
ミラーは巨国の魏と言えるだろう。
英国から唐突に『三國志演義』に持ち込んだのは
サンと三國志を掛けたわけでは絶対ない。
筆者の得意分野というだけだ。
主人公が巨大な敵に挑むのをハラハラドキドキ
読み進めて痛快ないのは、洋の東西や世代を超える。
さて前段、あえて「演義」と書いたのは、
創作も交えたそれと、歴史書『三國志』が異なるから。
つまりミラーからすればミラーの言い分がある。
1903年の創刊時「デイリー・ミラー」は
女性のための新聞だった。しかし結果が出ず、
絵や写真を全面に押し出した紙面構成に転身。
第二次大戦時には政権批判で発禁処分を受けてもいる。
ミラーにも苦難の時代はあったのだ。
その後、オーナーが変遷するなかで、
1984年にはロバート・マックスウェルが社主になる。
そう、メディア王にしてマードックのライバルだ!
マックスウェルは91年、この世を去ったが
ルパート・マードックはいまだ健在だ。
そして彼は「サン」を買収し、「ミラー」超えを
「ミラー」で副編集長だったラリー・ラムに託す。
その成否は『インク』本編に譲るとして……。
のちに英国「タイムズ」、米国「20世紀ファックス」等
世界のメディアを掌中に収めるマードックはまた、
イギリスの古式ゆかしいフリート街の解体も望み、
2016年、その夢は実現をみた・・・。
アルメイダシアターで『インク』が初演されたのは
その翌年の2017年になる。
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