麒麟琳記〜敏腕Pの日々のつぶやき改題

還暦手前の身の回りのこまごま。
スポーツや映画演劇など。

ハリポタと消費と鑑賞と。

2008年10月06日 | 東演
 今日は珍しく真面目に。

 通勤電車で立っていた僕の、隣の女性が『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』を読んでいた。
 言わずと知れた「ハリ・ポタシリーズ」の第4作。2001年のヒューゴー賞を受賞し、05年映画化もされている。

 で。思い出したのが・・・もうかなり前の夕刊(8/4付日経新聞)に長谷川一氏(明治学院大学准教授)が“ハリポタ現象”を評した記事だ。

 iPhoneの発売日にできた長蛇の列と『ハリー・ポッター』を我先にと購入するのはよく似ている。どちらも消費財だと氏は言う。
 僕も読んで、大きく頷いた。
 
 記事を引用すると、
 《あるいは全世界で公開されるハリウッド映画を見に行くのと同じ「同時性」を体験したい気持ちがある》
 と解析し、最後に、
 《出版界と教育界には「消費者」を「読者」に育てる取り組みに期待したい》
 と、その論を閉じている。

 おこがましいけれど、これは我々東演の、そして東演の属する“新劇”の命題でもある。

 氏は、『ハリポタ』が基本的に国単位の市場だった出版界に本格的なグローバリゼーションの波をもたらしたことを認めながら、『くまのプーさん』などとは全く異質の児童書だと言う。『ハリポタ』に熱狂する人は「読者」というよりむしろ「消費者」というほうが近い、と。

 演劇界においても、大手資本が参入し、有名人が多数出演する消費財が上演されiPhoneやハリポタ級の盛況らしい…。
 そんな中、“新劇”の使命は「消費者」ではなく「観客」を育ること!と信じて、作品創りに日夜奮闘している。
 黴の生えた昔通りの芝居を再生産するのではなく、今の客席に喜んでいただく舞台をこしらえるのは、たやすいことではないけれど、歯をくいしばって頑張るしかない。

 同じ芝居ばかり大量に観られるという状況が必ずしも良いわけではない。一人ひとりがそれぞれ多様な芝居を楽しむのが望ましい姿だろう。

 実は、これ、

 《同じ本ばかり大量に読まれるという状況が必ずしも良いわけではない。子供たち一人ひとりがそれぞれ多様な本を楽しむのが望ましい姿だろう。》

 という長谷川氏の論を演劇に置き換えたものだ。
そんな思いで創る東演の『空ゆく風のこいのぼり』。
 初日まで20日を切りました!
 ぜひ『観客』の皆様に観てもらいたいです。 

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