図書館から借りていた 藤沢周平著 「日暮れ竹河岸」(文藝春秋)には 十二篇の掌篇からなる「江戸おんな絵姿十二景」と 七篇からなる「広重 「名所江戸百景」 より」が 収録されているが 後半の「広重 「名所江戸百景」 より」を読み終えた。
藤沢周平著 「日暮れ竹河岸」
「広重 「名所江戸百景」 より」
著者が 巻末の「あとがき」で著述しているように 「広重 「名所江戸百景」より」も 前半の「江戸おんな絵姿十二景」と同様、1枚の絵から主題を得てごく短い一話をつくり上げるという趣向を継承した作品だが 安藤広重の「名所江戸百景」118枚から選ばれた7枚の絵から発想を得た 「日暮れ竹河岸」、「飛鳥山」、「雪の比丘尼橋」、「大はし夕立少女」、「猿若町月あかり」、「桐畑に雨のふる日」、「品川洲崎の男」の短編7篇からなっている。
「日暮れ竹河岸」(表題の作品)
登場人物 信蔵、市兵衛、たみ、六助、
信蔵は 六助の肩を抱き、「大丈夫だって、おれを信用してくれよ」
竹かし
「飛鳥山」
登場人物 女、おゆき、
「おっかちゃん」・・・突然に女の目から涙があふれ出た。
飛鳥山
「雪の比丘尼橋」
登場人物 鉄蔵、
誰かが泣いていやがる、と思って鉄蔵は顔を上げた。だがすぐにそのすすり泣きは 自分の口から出ていることに気がついた。
びくにはし雪中
「大はし夕立ち少女」
登場人物 さよ、
感じのいい笑顔のまま男はじゃあな、と言って背を向けた。・・・恋を失ったあとの気持ちはこんなだろうかと・・甘酸っぱいかなしみが胸にひろがって・・
大はしあたけ夕立
「猿若町月あかり」
登場人物 善右衛門、富蔵、るい、
結局 自分がいい顔したいばっかりに誰のためにもならないことをしてしまったような気もしてくる。
猿わか町よるの景
「桐畑に雨のふる日」
登場人物 ゆき、由松、豊太
「かみさんがいて、子供も二人いるんだって。あたしたち、おとっつあんに捨てられたのよ」
赤坂桐畑雨中夕けい
「品川洲崎の男」
登場人物 みち、富蔵、徳丸屋信兵衛、たね、長次郎、
いくら甲斐性なしの亭主でも簪一本ぐらいはつくってくれるだろう。みちはかすかな幸福感につつまれて。帰りの足を動かした。
品川すすき
「広重 「名所江戸百景」 より」は 藤沢周平晩年の作品集だが、収録されている短編7篇、各篇とも、江戸浮世絵から連想される江戸の風景、情緒、名もなき庶民の哀感等が いかんなく描かれており 藤沢周平ならではの作品集だと思う。