図書館から借りていた、葉室麟著 「おもかげ橋」(幻冬舎文庫)を、読み終えた。
読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。
■目次
第1章 遠い別離
第2章 忍びよる陰謀
第3章 封じられた過去
第4章 明かされた想い
解説 縄田一男
■主な登場人物
草波弥市(糸瓜)
小池喜平次(牛蒡、丹波屋喜平次)・お長、
猪口民部、萩乃、椎原亨、六兵衛、幸、
北上軍兵衛、
蓮乗寺藩藩主蓮乗寺治永、蓮乗寺治典、蓮乗寺左京亮、川口弥太郎、柴崎内膳、
笠井兵庫助守昌、井戸甚右衛門、弥生(大福餅)、
山崎屋庄兵衛、
老中安藤壱岐守信利、
■あらまし等
著者創造の九州肥前の小藩蓮乗寺藩で16年前、藩主後継をめぐる争いが有り、
上司勘定奉行猪口民部に裏切られ、国許を追われてしまい、江戸で暮らしている草波弥市と
小池喜平次、この2人のままならぬ人生と、二人の初恋の女性萩乃を軸にして描かれた
長編時代小説だ。
剣術では一流の弥市は、江戸の町家の敷地内で剣術道場を開いているが閑古鳥が鳴き、
39歳独身、貧しい暮らしを強いられており、一方喜平次は、武士の身分を捨て、
飛脚問屋丹波屋に婿入りし、商人になりきっている。2人には、16年前、国許を追われる前、
共に、一人の美貌な女性萩乃に恋心をもったライバル同士でもあった。
その萩乃が、突然、国許から江戸に出てきて、2人は用心棒を頼まれる。
すでに奥祐筆椎原亨の妻女となっている萩乃だが、16年前と変わらぬ美しさで、
その萩乃をめぐって嫉妬し合う二人、滑稽にも思えるお互いの揺れ動く想い。
著者の卓越した筆により、3人の思慕と友情、ライバル感情が、見事に描かれている。
しかし、萩乃が江戸に出てきた裏には、藩の陰謀、策略が、張り巡らせられており、
隠密、刺客が、2人を襲う。
国許では、化け物と恐れられた男、蓮乗寺左京亮が返り咲きし、藩内二分の政争、
さらに16年前に、2人が為したことに対する執念深い報復が絡んで、
次第に巻き込まれていく、弥市、喜平次、萩乃。
最終章では、萩乃が心の奥に秘め、自分でも気が付かなかった想いを打ち明ける。
弥市は・・・。
「大福餅は、それがしの大好物でござる」
弥生の登場で、思わぬ展開になる。
「さてな、お主はきっと来るに違いないと思ったのは、幼いころよりの友だからで
あろうな。お主はそういう男だ」
「武士とは、命懸けで人を信じるもの」
高田の馬場に向かう、弥市、喜平次、萩乃・・・、
蓮乗寺左京亮派、猪口民部派、陰謀、策謀、命懸けの戦いに巻き込まれ・・・・、
因みに、表題の「おもかげ橋」は、
弥市、喜平次が、丹波屋の寮のある江戸の西はずれの高田村へ向かう途中に有る
神田川に掛かる橋の名で、「姿見橋(すがたみのはし)」「俤の橋(おもかげのはし)」だが、
実在する橋なのだそうだ。
「俤の橋では、遠くを眺め遣る喜平次が心の奥で行きつ戻りつ、思案に暮れて佇んでいる」
哀愁漂うシーンで、終わっている。