図書館から借りていた、葉室麟著 「川あかり」(双葉社)を 読み終えた。
読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。
■目次
(一)~(十六)
■主な登場人物
伊東七十郎、伊東勘左衛門、幸(さち)、さき、ちえ、
佐々豪右衛門(さっさごうえもん)、お若、弥之助、千吉、徳元(とくげん)
佐次右衛門(さじえもん)、おさと、五郎、
お茂婆(おしげばあ)、
増田惣右衛門(ますだそうえもん)、
稲垣千右衛門、稲垣頼母(いながきたのも)、美祢(みね)、矢沢左太夫、
甘利典膳(あまりてんぜん、綾瀬藩江戸家老)、沼田四郎兵衛(綾瀬藩国家老)
佐久間兼堂、桜井市之進、佐野又四郎、
綾瀬永元(綾瀬藩藩主)、倉田文左衛門(側用人、老臣)
松藏・おかね、
猪野伝助(上野藩(あがのはん)郡方見廻役)、
出雲屋角右衛門、
■あらすじ等
綾瀬藩一番の臆病者と自他共認める18歳の伊東七十郎が、藩の派閥争いの渦中に巻き込まれ、
古狸と呼ばれる元勘定奉行の増田惣右衛門から、江戸から帰国する江戸家老甘利典膳を、国に
入る前に斬れと命じられる。ところが、川止めで木賃宿に逗留、足止めを食らうことになる。
相手は、対岸まで来ているはず。川明けを待つ間に、思いもかけない市井の人々と触れ合い、
密命にも拘らず、バカ正直に全てを打ち明けてしまい、さらには降って湧いたような事件、
災難が続く。松藏、おかねが・・・、佐野又四郎が・・・、
純朴でクソ真面目、うぶで気弱な七十郎の心は千々に乱れるばかり・・・。
いよいよ川明けになり、「今日死ぬかも知れない」、潔く死ぬ覚悟を決めた七十郎、
「それがしは、刺客でござる」、たとえ、歯が立たない相手であっても、
どんなにみっともない結果になろうとも、全力を尽くすのみ、自分を叱咤激励し、
叫びながら刀を抜いたのだが・・・・、
豪右衛門、お若、千吉、弥之助、徳元、佐次右衛門、おさと、五郎が・・・、
「川を渡ることはなかったが、大切にせねばならぬ友を得たではないか」
七十郎は、顔に笑みを浮かべ、遠く青々した山並みに向かって足を踏み出した。
で、物語が終わっている。
あまりにも正直過ぎる、真面目過ぎる若者七十郎が、刺客として命をかける緊迫した
筋立てであるにも拘らず、ふと出会い、知り合った人達と友情で結ばれてゆく過程が
描かれており、主要な登場人物それぞれが自分を語るストーリー等も織り交ぜながら、
フィナーレを迎える。
本書は、単なる、暗く陰険な刺客の物語ではなく、登場人物の友情や恋慕、人間性を見事に
描いた、著者ならではの傑作長編時代小説だという気がする。