足腰大丈夫な内に、出来る限り不要雑物整理をしようと決心してから久しいが、正直あまり捗っていない。書棚や天袋、押入れ等に詰め込まれていた古い書籍や辞書、百科事典等の類も、ここ数年間で大胆に整理処分してきたつもりだが、中には、「これ、面白そう?」等と目に止まり、残してしまったものも結構有る。その中のひとつに、多分、長男か次男かが、学生時代に使っていたものに違いない、小町谷照彦著 文英堂の「小倉百人一首」(解説本・参考書)が有る。パラパラとページを捲ってみたところ、なかなか詳しく、分かりやすく、決して、「今更 向学心?」なーんてものではなく、子供の頃、作者や歌意も分からないまま、「けふ、けふ、けふ・・」「なほ、なほ、なほ・・・」等と、正月になると必ず家族でやっていた「百人一首かるた取り」を思い出して懐かしくなってしまったからで、今更になって、「へー!、そういう歌だったのか・・」、目から鱗・・、になっているところだ。
「小倉百人一首」は、奈良時代から鎌倉時代初期までの百人の歌人の歌を、藤原定家の美意識により選び抜かれた秀歌であるが、時代が変わっても、日本人の心情が呼び起こされるような気がしてくる。
ブログネタに?、頭の体操に?、いいかも知れない等と思い込んでしまい、数年前から、「春」「夏」「秋」「冬」「恋」を詠んだ歌を取り上げて、ブログ・カテゴリー「懐かしい小倉百人一首」に書き留めてきたが、そのいずれの区分にも属さないとされる歌も沢山有り、引き続き、順不同、ボツボツ、書き留めてみることにした。
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百人一首で、
「春」「夏」「秋」「冬」「恋」を詠んだ歌以外の歌
その17
嵐吹く 三室の山の もみぢ葉は
龍田の川の 錦なりけり
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/57/4b/41b846ae4c5acd32db69e3cf828678e9.jpg)
出典
後拾遺集(巻五)
歌番号
69
作者
能因法師
歌意
激しい山風が吹き荒らす三室山のもみじの葉は
龍田川の水面に散り敷き
あたかも錦織りのようになるだろうなあ。
注釈
「三室の山のもみぢ葉は」の「三室の山」とは、
紅葉の名所、
奈良県生駒郡斑鳩町に有る神南備山(かんなびさん)のこと。
「三室」は「御室」とも書き、神を祭る所、神社の意。
「龍田の川の錦なりけり」の「龍田川」は、
やはり、紅葉の名所、
奈良県生駒郡に流れる川のこと。
「錦」は、錦糸、銀糸等で模様を織り出した織物のことで、
紅葉の美を見立てた比喩的表現。
後拾遺集の詞書(ことばがき)には、
「永承四年、内裏歌合に詠める」と有り、
実景を詠んだものでなく、
観念的な歌であることが分かる。
能因法師(のういんほうし)
肥後守橘元橘(ひごのかみたちばなのもとやす)の子、
俗名、橘永愷(たちばなのながやす)、
26歳頃出家した。
西行法師と並ぶ漂泊の歌人だったとされている。
参照・引用
小町谷照彦著「小倉百人一首」(文英堂)
(つづく)