図書館から借りていた 平岩弓枝著 御宿かわせみシリーズ第12弾の作品 「夜鴉おきん」(文春文庫)を 読み終えた。
御宿かわせみシリーズは 江戸時代末期、江戸大川端の小さな旅籠かわせみの泊り客に関わる事件や厄介事を、若い女主人の庄司るい、八丁堀与力の弟でるいと夫婦同然の神林東吾、るい、東吾とは幼馴染で八丁堀同心の畝源三郎、岡っ引きの長助、かわせみの老番頭の嘉助、かわせみの女中頭のお吉等々、個性豊かな人物が 恋模様と江戸情緒を織り込ませながら 人情たっぷりに解決していく捕物帖で 平岩弓枝氏の代表的な時代小説である。
34巻にも及ぶ長編小説であり、どうしてもはじめは手を伸ばすのに躊躇してしまいがちだが、ほぼ1話完結、連作短編構成になっているので 記憶力減退の爺さんでも すこぶる読み易く、次々読みたくなっていく作品であり、いまではすっかり 妻と順番に回し読みするようになっている。
本書には 表題の「夜鴉おきん」をはじめ、「酉の市の殺人」「春の摘み草」「岸和田の姫」「筆屋の女房」「江戸の田植え歌」「息子」「源太郎誕生」の 連作短編8篇が収録されている。
平岩弓枝著 御宿かわせみ12 「夜鴉おきん」
「酉の市の殺人(とりのいちのさつじん)」
毎年出掛け飾り熊手等を買ってくる嘉助に代わって、その年は るい、東吾、お吉が酉の市に出掛けたが 花又村は 見渡す限り田と畑、正真正銘の田舎。酉の市で見掛けたのは 美貌の女房とみてくれの悪い亭主、書物地本問屋英盛堂の家付き内儀のお紀乃と婿養子の与兵衛だったが、お紀乃が死体となって荒川で発見された。下手人は?、源三郎、東吾、長助等が究明し 捕り物の末 召し捕る。
「春の摘み草(はるのつみくさ)」
東吾は 狸穴の方月館のおとせ、正吉と摘み草をしている時、穀物問屋の後妻およねと出会う。本所の貸席業三河屋喜左衛門の息子万太郎が祖母を傷付けた事件と関わってくるとは?
結末が哀れである。
「岸和田の姫(きしわだのひめ)」
東吾が老師の病気見舞いで代々木野へ出掛けた時に喘息発作で苦しむ少女を助けるが・・・、実は 泉州岸和田五万三千石の大名、岡部美濃守の姫君だった。姫君は 国元泉州に帰る前に 江戸の市井を見たいと かわせみにやってくる。るいをはじめ総動員でお膳立て、さながら昔の東映の娯楽映画・お姫様物のごとし、本篇には 殺人事件、捕り物は無い。
「筆屋の女房(ふでやのにょうぼう)」
東吾をたずねて かわせみにやってきたのは 神田三河町の筆屋盛林堂の内儀たか。自分は命を狙われている・・・というのだが。医者の近江道仙の娘お蝶が殺される。下手人は?、盛林堂の主要助?、殺人のからくりを解く東吾。
「夜鴉おきん」(よがらすおきん)(表題の作品)
かわせみにやってきた源三郎から 東吾は 連続して発生している商家強盗事件では 必ず
小僧、手代が殺されていると聞く。兄、八丁堀吟味方与力神林通之進からも 盗まれた金額が他と比べて莫大にも拘らず 惨殺されているのは小僧か手代一人だけというのもおかしい。源三郎に手を貸し探索するよう指示される。かわせみに結び文を届けた女?、キーワードは「抜けまいり」?、東吾、源三郎等が探索、捕り物の末、盗賊5人は奉行所へしょっ引かれたが、、、。かわせみにおきんがやってくる。るいにやきもちを焼かれる東吾。
「江戸の田植え歌」(えどのたうえうた)
千駄木坂下町の質屋吉野屋の主嘉兵衛が卒中で亡くなったが 女房お里は妾おけいが殺したのではと訴える。お吉が贔屓にしていた百姓の良吉が死体で大川で発見されたが・・・・、東吾、源三郎が 事件を究明していく。千住大橋のあたり両側には田畑が続き、のどかな田園風景が広がっている。
本文文節の一部
「女って奴は わからねえな」(中略)「良吉の奴が かわいそうだな」
流れに乗ってすべりだした舟の後に 陽気な田植え歌が追いかけるように聞こえていた。
「息子」(むすこ)
東吾は掘割に架かっている橋の上で取っ組み合いをしている男二人、大工の棟梁源太と息子の小源太に行き合う。その大工親子が かわせみの離れの増改築を請け負っていた。源太小源太と押し込み盗賊との関わりは?、二人の息子を守る源太、東吾、源三郎が駆けつけ捕り物の末、鬼童丸を捕縛。
「源太郎誕生」(げんたろうたんじょう)
臨月が近くなり里帰りしていた千絵。源三郎は寂しげ。るいはなんだがすっきりせずお節介。
るいも知っているおたみの亭主は 日本橋本石町の布袋屋の番頭新七、上州等の掛取りの帰りに行方不明に。事件究明に乗り出す東吾、源三郎は 千住へ。女郎お雪?、情夫弥十?、新七は 死体で大川の岸辺で発見。
一度死産している源三郎、千絵夫婦に待望の男の子源太郎が誕生する。
本文文節の一部
「おい、源さん、源太郎誕生だぜ、驚いたなあ、源さんが親父になっちまいやがったなんて、驚きも桃の木山椒の木だ」その東吾の手を握り締めて、源三郎はぽろっと涙をふりこぼした。
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