足腰大丈夫な内に出来る限り、不要雑物処分・身辺片付け整理をしよう等と思い込んでからすでに久しいが、正直なかなか進んでいない。それでもここ2~3年には、押し入れや天袋、物置、書棚等に詰まっていた古い書籍類等をかなり大胆に処分してきた。ただ、中には「これ、面白そう・・」等と目が止まり、残してしまった書籍もまだまだ結構有る。その中に 漫画家赤塚不二夫著、元東京学芸大学附属高等学校教諭石井秀夫指導の古典入門まんがゼミナール「枕草子」(学研)が有る。多分、長男か次男かが、受験勉強中に使っていた「枕草子」の解説本・参考書の一つのようだが、錆びついた老脳でもなんとか読めそうな、まんがで描いたくだけた内容、その内いつか目を通してみよう等と仕舞い込んでいたものだ。ながびく新型コロナ禍、不要不急の外出自粛中、ふっと思い出して、やおら引っ張りだしてみた。当然のこと、本格的な「枕草子」解説本、参考書とは異なり、限られたサワリの部分に絞ったものであるが、学生時代に多かれ少なかれ齧っていたはずの日本の代表的な古典、清少納言の「枕草子」も、ほとんど覚えていないし、「古典」に疎く、苦手な人間でも、十分楽しめそうで、御の字の書である。
「風変わりな宮廷紳士たち」・まんがゼミナール「枕草子」 その20
第275段 「大蔵卿ばかり耳疾き人はなし」
鋭い耳の持ち主だった大蔵卿藤原正光についての回想の段。蚊のまつげが落ちる音をも聞きつける程耳の良い(清少納言の誇張)老人(当時42歳)の大蔵卿藤原正光が、御簾の内部に来ていて、女房達は彼が邪魔で、彼が立ち去ったら、若いお目当ての藤原成信に扇の絵を書いてもらおうとひそひそ話をしていたところ、それが大蔵卿には、筒抜けに聞こえていて、清少納言は、驚き、あきれてしまうというエピソード。
大蔵卿正光様ほど耳が鋭い人はおまへん。
大蔵卿「そなたのまつ毛が落ちましたで・・・・」
女房「えっ!、ウッソー。あらほんと。どーしてえ」
大蔵卿「ハッハッハッ」、立ち去る。
女房「すばらしい・・というより、気持ちわりーお方や・・・」
女房達「あら、また 地獄耳の卿が来はったエ」
大蔵卿「地獄耳がどないした・・・・?」
女房達「わっ!、聞かれてしもた・・・」
大蔵卿「あっ!、宮の御几帳に蚊が入ったで。はよう追うてしまいなはれ」
「だれや、職の御曹司にノミ等持って来たのは!、跳ねる音、聞こえるでっ!」
女房達「ワッ!」「えーっ!」
女房達「まったく驚くべきお方やね・・・。ところで先程の話の続きやけど」
「しーっ!、大蔵卿が帰らはってからね・・・」
大蔵卿「にーくたらし!、そない言うんやったら、今日は居座ったる。そなたをはじめ女房どものすかしおならの回数でも数えたるで・・・」
女房達「まっ!」「あきまへん、そればかりは堪忍どす」「降参や、白旗や」
大蔵卿「オッホン!」
原文だよーん
大蔵卿(おほくらきゃう)ばかり、耳疾(みみと)き人はなし。まことに、蚊のまつげの落つるをも聞きつけ給ひつべうこそありしか。(略)、遠く居て「憎し。さ宣(にたま)はば今日は立たじ」と宣ひしこそ、いかで聞きつけ給ふらむとあさましかりしか。
(注釈)
大蔵卿藤原正光様ほど耳の鋭い人はいないと思う。ほんとに、蚊のまつ毛が落ちる音をも聞きつなさることが出来そうな程でしたよ(誇張)。(略)、大蔵卿様は、遠くに座っていながらも、私達の内緒話を聞きつけ、「けしからん。そんな風におっしゃるのなら、今日は帰りますまい」と、おっしゃったのは、どうして聞きつけなさったのだろうかと驚き、あきれてしまったものでした。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます