足腰大丈夫な内に、出来る限り不要雑物整理をしようと決心してから久しいが、正直あまり捗っていない。書棚や天袋、押入れ等に詰め込まれていた古い書籍や辞書、百科事典等の類も、ここ数年間で大胆に整理処分してきたつもりだが、中には、「これ、面白そう?」等と目に止まり、残してしまったものも結構有る。その中のひとつに、多分、長男か次男かが、学生時代に使っていたものに違いない、小町谷照彦著 文英堂の「小倉百人一首」(解説本・参考書)が有る。パラパラとページを捲ってみたところ、なかなか詳しく、分かりやすく、決して、「今更 向学心?」なーんてものではなく、子供の頃、作者や歌意も分からないまま、「けふ、けふ、けふ・・」「なほ、なほ、なほ・・・」等と、正月になると必ず家族でやっていた「百人一首かるた取り」を思い出して懐かしくなってしまったからで、今更になって、「へー!、そういう歌だったのか・・」、目から鱗・・になっているところだ。
「小倉百人一首」は、奈良時代から鎌倉時代初期までの百人の歌人の歌を、藤原定家の美意識により選び抜かれた秀歌であるが、時代が変わっても、日本人の心情が呼び起こされるような気がしてくる。
ブログネタに?、頭の体操に?、いいかも知れない等と思い込んでしまい、昨年、一昨年、「春」、「夏」、「秋」、「冬」、季節を詠んだ歌を取り上げて、ブログに書き留めたが、今回は、最も数の多い、「恋」を詠んだ歌を取り上げて、順不同、書き留めてみることにした。
百人一首で「恋」を詠んだ歌 その25
陸奥の しのぶもぢずり 誰故に
亂れそめにし 我ならなくに
出典
古今集(巻十四)
歌番号
14
作者
河原左大臣
歌意
奥州の(信夫地方の)しのぶもぢずり(乱れ模様染めの)ように
私の心も恋のため乱れていますが、
いったい誰にためにこんなに思い乱れているのでしょう。
あなた以外の人のために、心が乱れる私ではないことなのに。
(この乱れた恋心は、あなたのせいなのですよ)
注釈
「陸奥(みちのく)」=奥羽地方の東半部の総称。
「しのぶもぢずり」=福島県信夫地方で産出していた乱れ模様に摺り染めた布。
「乱れ」の序詞。
「誰故に(たれゆゑに)」=「あなた以外の誰のせいで」の意。
「乱れそめにし」の「そめ」は、
「初め(そめ)」と「染め(そめ)」の掛詞。
「しのぶもぢずり」の縁語。
「我ならなくに」の「な」は、打ち消しの助動詞。
「私ではないのに」の意。
河原左大臣(かわらのさだいじん)
源融(みなもとのとおる)のこと。
第52代天皇嵯峨天皇の皇子だったが、臣下の籍になり、
「源」の姓を賜った。
平安京の東六条の「河原院」という邸宅に住み、左大臣従一位だったことで
河原左大臣と称した。
「河原院」は、奥州の名所塩竈の景色を取り入れた豪華、風流な邸宅だったが、
河原左大臣没後、荒れ果ててしまい、後に、そこを訪れた恵慶法師が
「八重むぐら 茂れる宿の さびしさに 人こそ見えね 秋は来にけり」
と、詠んでいる。
さらに、河原左大臣は、宇治と嵯峨に別荘を持っていたが、
宇治の別荘は、後に寺院となり、「宇治の平等院」となっている。
参照・引用
小町谷照彦著「小倉百人一首」(文英堂)
(つづく)