たけじいの気まぐれブログ

記憶力減退爺さんの日記風備忘雑記録&フォト

「寄り合い家族」 No.011

2023年09月13日 21時00分57秒 | 物語「寄り合い家族」

第3章 「くにと千代子」
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明治24年、埼玉県の農家の次女として生まれ、幼くして、東京の小料理店に奉公に出された石澤くには、三十路前後から、渋谷で、鳶職の阿藤源吉と同棲し、人並みの安定した暮らしに入っていたが、自分の生い立ちや、その間の遍歴を、生涯語ることをしなかった。人に知られたく無い数多の辛酸が有ったに違いない。内縁の夫源吉が、どこまで、くにの遍歴を知っていたのかも、不明だったが、女一人、東京で生きるためには、男運、金運、数多の遍歴を重ねたことが想像される。少なくとも、結婚、出産、家庭を持つという、定石通りでは無かったことは確かであり、訳有りの女だったはずだ。周りからは、「どうも、水商売をしていたらしい?」という風にとられていたくにだったが、それ以上を追求されなかったのは、品の良さや人当たりの良さ、面倒見の良さ、親しみやすい人柄だったことによるのだろう。
源吉と同棲した後も、子供は出来ず、どうしても自分の子供が欲しいという悲願を持ったのも、生い立ちや、遍歴から生まれたことだったのかも知れない。それは、軽い思い立ち等ではなく、くにの生涯を掛けたものだった。千代子を養女にしてからは、実の母娘以上の深い絆を築き、ひたすら千代子のために生き、戦後、異国とも言える北陸の山村に移住してからも、78歳の生涯を閉じるまで、千代子に寄り添って生きたのだ。細身で和服が良く似合い、一見、弱々しく見えたくに、まさに、明治、大正、昭和を生き抜いた、働き者で献身的な女性だった。

(つづく


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1 コメント

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Unknown (ひろし曾爺1840)
2023-09-14 08:53:14
👴:お早う御座いま~す!
🌅今日も日中は暑い様なので風通しの良い部屋ですごしましょ~!
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