たけじいの気まぐれブログ

記憶力減退爺さんの日記風備忘雑記録&フォト

「寄り合い家族」 No.009

2023年09月04日 09時05分36秒 | 物語「寄り合い家族」

第2章 「出自」
(3)

千代子が、17歳になった頃、実の兄徹郎が千代子に打ち明けた話が有る。実の父木村甚一郎は、千代子を、くにの養女にしてまもなくの昭和6年2月に、松本の甚一郎の実家の遠戚に当たる柳萬善太の養女、柳萬キクと再婚して、東京市豊多摩郡渋谷町丹後(現渋谷区)に所帯を構え、徹郎、千代子の義妹となる子供(異母妹)が生まれていたという話だった。千代子は、大きな衝撃を受け、その話を、養母くににも話した。それまで知っていて話してくれなかったのではないかと、詰め寄ったりもしたが、くにからは、お互いに深い事情が有ってのこと、どうすることも出来ないこと、今は、お互いに、行き来しない方が良いことを諭されて、頷くしかなかったのだ。おそらく、絶縁、離別した実の父ではあったが、長男である徹郎と、長女千代子の養母であるくにには、手紙等で、近況等をある程度知らせていたに違いない。
ただ、千代子には、心の内を語れる、良き相談相手、実の兄徹郎が現れたことで、心が浮き立っていて、何事も徹郎の言う事にも従い、そのことで、余り悩んだり苦しんだりもせず、明るく天真爛漫に暮らすことが出来たのだった。それでも、心の奥底には、実の父親が身勝手で薄情な人だとの思い、恨みは、消えることなく、戦後、昭和30年代、晩年になってから、お互いに落ち着き、実の父娘再会を果たす頃まで、くすぶっていたのだった。

(つづく)


これまでの主な登場人物

千代子(木村甚一郎の長女、石澤くにの養女)(主人公)
石澤くに(千代子の養母)
阿藤源吉(石澤くにの内縁の夫、鳶職)
木村甚一郎(千代子の実父)
木村徹郎(木村甚一郎の長男、千代子の実兄)
木村助三郎(木村甚一郎の従兄弟)
木下松蔵(大工、松つぁん)
市和田春治(町内会世話役、土建業)


 


この記事についてブログを書く
« 振り返り記事・「秋の七草」 | トップ | トウワタ(唐綿) »

物語「寄り合い家族」」カテゴリの最新記事