足腰大丈夫な内に出来る限り、不要雑物処分・身辺片付け整理をしよう等と思い込んでからすでに久しいが、正直なかなか進んでいない。それでもここ2~3年には、押し入れや天袋、物置、書棚等に詰まっていた古い書籍類等をかなり大胆に処分してきた。ただ、中には「これ、面白そう・・」等と目が止まり、残してしまった書籍もまだまだ結構有る。その中に 漫画家赤塚不二夫著、元東京学芸大学附属高等学校教諭石井秀夫指導の古典入門まんがゼミナール「枕草子」(学研)が有る。多分、長男か次男かが、受験勉強中に使っていた「枕草子」の解説本・参考書の一つのようだが、錆びついた老脳でもなんとか読めそうな、まんがで描いたくだけた内容、その内いつか目を通してみよう等と仕舞い込んでいたものだ。ながびく新型コロナ禍、不要不急の外出自粛中、ふっと思い出して、やおら引っ張りだしてみた。当然のこと、本格的な「枕草子」解説本、参考書とは異なり、限られたサワリの部分に絞ったものであるが、学生時代に多かれ少なかれ齧っていたはずの日本の代表的な古典、清少納言の「枕草子」も、ほとんど覚えていないし、「古典」に疎く、苦手な人間でも、十分楽しめそうで、御の字の書である。
「ワテのセンスを知ってほしいワ」・まんがゼミナール「枕草子」その18
第137段 「五月ばかり、月もなういと暗きに」
中宮定子のもとには、清少納言はじめ、風流を解し話題の豊富な女官が大勢おり、殿上人にとっては人気のある後宮だった。月も無い暗がりで男たちのガヤガヤする声が聞こえ、清少納言が咎めると だまって御簾を持ち上げて呉竹を差し入れてきたが、清少納言が 咄嗟に「おや、この君ね」と、竹の異名「此君」を踏まえて言う。その学識、機知に驚いた殿上人たちと、結局、一夜を語り明かすことになるという、楽しい宮廷生活の一こまを回想した段。
五月のころ、月もなく、たいそう暗い夜、
ガヤガヤ、ザワザワ、
殿上人たち「女房方おいでどすか?」
中宮定子「出てごらんなはれ。いつになく騒々しいでおますね」
清少納言「どなたでおます。オーバーに騒がはっとるのは」
ガサ、ガサ!、何も言わず、御簾を持ち上げて、呉竹が差し出された。
清少納言「まあ!、この君でおましたの・・」
殿上人たち「えッ!」「ちゃんと見事な答えが返ってきたで」「殿上に戻って皆に話したるで」
中宮定子「まあ、皆はん、いてもうたわ」
藤原行成「言い出しっぺのワイを置いて帰るなんておかしな者たちやなあ・・」「実は、お庭の呉竹を折って、ここで歌でも詠むつもりやったのや。呉竹の別名を素早く言われてしもうて、逃げ出しよった。これはまたおもしろい!」「そなたは、どないなわけで、普通の人では知らへんような知識があるんや」
清少納言「ホホホホホ・・、竹の名とも知らへんで言うたどす」
藤原行成「えーっ!、ほんまかいな。そーかいな。ワイはまた、気の利いたしゃれかと思うたで。
清少納言「フフフフフ・・、そうゆーことにしといてーナ」
殿上人たち「植えて、この君 というたろー」
藤原行成「清少納言のウイットにおかしな節つけて、また来よったで」
殿上人たち「殿上の間では、帝も聞かはり、面白がっておいでどした」「この君と申す」「この君と称す」「この君、この君、スチャラカチャンと」「この君と言うたろ」
清少納言「あーあ、すっかり、流行語になってしもたワ」
中宮定子「帝まで面白がらはって、文を下されましたで」
清少納言「恐れ多いことでおます。頭の弁様が面白くお話し申し上げたからやと思います」
中宮定子「ワテの女房がほめられるのは、うれしいものやで」
原文だよーん
五月(さつき)ばかり、月もなういと暗きに、「女房や候ひ(さぶらい)給ふ」と声々して言へば、「出でて見よ。例ならず言ふは誰(たれ)ぞとよ」と仰せらるれば、「こは、誰(た)そ。いとおどおどろしう、きはやかるなるは」と言ふ。ものは言はで、御簾(みす)をもたげて、そよろとさし入るる、呉竹(くれたけ)なりけり。「おい、この君にこそ」と言ひわたるを聞きて、「いざ、いざ、これ、まづ殿上に行きて語らむ」とて、式部卿の宮の頭中将、六位どもなど、ありけるは往(い)ぬ。頭の弁はとまり給へり。
(注釈)
五月頃の月もない暗い夜に、「女房方は、こちらに控えておいでですか」と 大勢の声がするので、中宮定子様が「出て見なさい。いつになく騒がしく言っているのは誰なんでしょう」とおっしゃるので、私が、「これは、誰ですか。実に騒々しく、際立って目立つ声は?」と言ったところ、何も言わないで、御簾を持ち上げて、ガサッと差し入れてきたのは なんと呉竹でした。「まあ、この君なのね」と私が言ったのを聞いて、「さあ、さあ、これを、まず殿上の間に戻って話そう」と言って、式部卿の宮源中将様や六位の蔵人たち等そこに居た人たちは去って行ってしまった。頭の弁藤原行成様だけがとどまりなさった。
まず大筋を知るのに分かり易く読めますよね。
そして原文に戻るとよく分かって、雰囲気も楽しめますしね。
秋の夜長にまた読書が進みますね(^_-)-☆
断捨離、頑張って下さいね~
コメントいただき有難うございます。