講談社文芸文庫 「群像」昭和四十六年一月号
この明治四十二年夏という短編は、「司令の
休暇」のすぐあとに書かれたものだという。
この古ぼけたいささか汚い本がうちに持ち込
まれ初版本であるが故に、やけが酷く、とても
読みづらかったが、この本の最大の読み物は
全部読んでみて、「司令の休暇」だろうな、と
思う。ぼくとしては、「幼年詩篇」が一番好き
だった。
この明治四十二年夏も父上に関して書かれていて、
死んだあと、友人の手紙の追悼の思い出によって
幕を開ける。漱石の詩碑を見に行ったことが印象
深く描かれているが、泣きはしなかった。まあ、
皿を舐めるように一冊を堪能したぼくだった。
(読了日 2023年 11・26(日)21:26)