講談社文芸文庫 「新潮」昭和45年12月号
鵠沼海岸を読んでから、二カ月近く寝かせて
いて、読み始めた。父が癌になり、告知はし
ないで、死んでいく様をとつとつと描いている。
今どき、こんな小説読んでいるのはわしくらい
のものだろうな、と思いつつ耽読。
けっこう汚い描写とかもあるし、読むのは辛い。
それにひきかえ、感動があるわけでもないので、
つらいだけの読書だ。だけど、なんかおもしろい。
生と死の狭間を疑似体験できる気がする。
なんだかやねこい父をひとり、見送ったような、
ひと仕事した気分だ。なんとも父が死にはった
ことで、その妻のような、ホッとした気分さえ
感じる。
ぼくの読書も終われる。そう胸をなで下ろした。