![]() | 新参者東野 圭吾講談社このアイテムの詳細を見る |
お待ちかね、東野圭吾。
この方の作品には、ほとんど間違いがなくて、安心感がありますねえ・・・。
この本がまた、素晴らしい出来です。
主人公は刑事、加賀恭一郎。
日本橋署に着任したばかりの新参者。
Tシャツの上に半そでのシャツを羽織ったラフなスタイル。
浅黒くホリが深くて、髪はやや長め。
刑事のイメージからかなり外れております。
そしてカッコイイ(^^♪
ストーリーは、彼が担当した一つの事件を追います。
1人暮らしの40代女性が絞殺されたという事件。
でもこれは9章からなる短篇の連作集という形をとっています。
加賀は毎日毎日、この日本橋界隈の店を訪ね歩くのです。
そんな中で聞き及んだ些細な謎を解き明かしていく。
しかし、それは全く無駄な捜査なのではなくて、
もともとの大きな事件の解決の糸口となっていきます。
このあたりのお店の風情がいいのですよ。
みな古くからの個人商店ですね。
お煎餅屋。料理屋。
瀬戸物屋。時計屋。
洋菓子屋。民芸品屋。
当然ながら、それぞれに働く人がいて、しっかり仕事をしている。
多くは家族で、そこが生活の場でもある。
こういう街っていいもんだなあ・・・。
近頃、大型スーパーにしか行ったことがない私は、懐かしくも思えました。
そこへまた、加賀刑事が足しげく通うんですよ。
そこで買った「お煎餅」やら
「パッションフルーツと杏仁豆腐のゼリー」やら
「人形焼」やらをお土産にして・・・。
こんなカッコイイ気さくな刑事が通ってきたら、
もうあることないこと(?)なんでもしゃべっちゃいますね・・・。
例えば始めの話は、お煎餅屋さんに来た保険屋の話し。
彼は、亡くなった女性の家を当日訪ねていたのです。
そして、その事件時のアリバイが不確か。
保険屋はその後、このお煎餅屋に来ているので、
その時刻を確認のために加賀刑事が来たわけですね。
しかし、全くのシロといえるだけの証拠にはならない。
けれど結局、加賀刑事の推理の冴えによって、
無事保険屋の無実が証明されます。
実は保険屋は、この煎餅屋の家族の大切な秘密を守るために、
警察にも事実を告げていなかったのです。
人の温かな気持ちが描かれているところが、なんとも心地よい。
こんな話が次々と連鎖していくんです。
わさび入りの人形焼の謎。
どうしようもなくいつも喧嘩ばかりの嫁・姑の不思議な仲・・・。
なくなった女性が期待していた赤ちゃんの謎・・・。
本筋以外でも、興味深い謎ばかりです。
密室殺人もなし。
不可解な現場でもなし。
ダイイングメッセージもなし。
大掛かりなどんでん返しもなし。
それでも、ミステリってこんなに面白く書けるんだ
・・・と感動してしまいます。
素晴らしい構成力に加えて、
生きて生活する人々がきちんと描かれているから・・・。
全く、見本にしたいくらいの高品質作品でした!
満足度★★★★★