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伊坂幸太郎
近藤史恵
有川浩
佐藤友哉
本多孝好
道尾秀介
米澤穂信
この豪華7人のアンソロジーです。
“短篇並みの長さで読み応えは長編並み、永久保存版アンソロジー”というウリ。
確かに、これはなかなか読み応えがありました。
まず、冒頭、伊坂幸太郎「首折り男の周辺」。
これぞ伊坂スタイル。
いろいろな登場人物が交互に描写されつつ、ストーリーは進んでいきます。
町では未解決のある類似した殺人事件が話題になっている。
アパートの隣の男が犯人ではないかと疑う夫婦。
犯人と非常に良く似ているのだけれど、実は気の優しい男。
いじめられている少年。
彼らがつながってゆきます。
そして最後にはぴたりと収束。
これが心地よいのですよね~。
次の近藤史恵「プロトンの中の孤独」。
自転車ロードレースに挑む男のストーリー。
それは第一線の花形の話ではないのです。
いいところまでは行くけれども、うだつの上がらない、
そろそろあきらめるべきなのか・・・というような。
チーム内の確執もなかなかシビア。
けれど、なんだか男くさい心の交流があったりする。
いい味の物語です。
「茄子 アンダルシアの夏」や「茄子 スーツケースの渡り鳥」を思い出しますね。
米澤穂信「玉野五十鈴の誉れ」
う~む。
この時代色たっぷりの独特の雰囲気。
やられました。
地方の旧家が舞台です。
家はそこのお祖母様に完全に支配されている。
聡明で品のよい孫娘、純香は、玉野というお付の娘を与えられるが・・・。
これは全然展開が読めず、なんだかドキドキさせられる物語でした。
作者の強烈な才能と個性が感じられる一篇です。
お気に入りはこんなところでしょうか。
でも、残念なことに、
この本の表題と同じ有川浩の「ストーリー・セラー」、
これは好きにはなれなかった。
妙な青臭さと、とってつけたようなエピソード、
彼女の奇病という大もとの設定も納得できないし・・・。
せっかく「3匹のおっさん」で、彼女を見直したところだったのですが、
この作品については私の苦手な部分ばかりが目に付く残念な結果となりました。
ともあれ、力作揃いですので、
きっとどなたにもお気に入りの作品が見つかると思います。
満足度★★★★☆