映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

フォレスト・ガンプ/一期一会

2012年03月05日 | 映画(は行)
風に流されるまま、目の前のことにただ一生懸命・・・

               * * * * * * * * * *

1995年アカデミー賞6部門受賞というこの作品、
実際あまりにもいい作品なので、ここに載せるのも「今さら・・・」なんですが、
久しぶりに見てまた感動し直したものですから・・・。


冒頭、白い一枚の羽が風に舞い、
一人の汚れたスニーカーを履いた男の足もとに落ちてきます。
これがフォレスト・ガンプその人で、
彼はその羽に気づくと大事に拾い上げて、鞄の中に持っていた絵本に挟みます。
この羽は作品ラストにまた出てくるのですが、
つまり、このように風に吹かれるまま、なすがままに生きてきた彼の人生を象徴しているのでしょう。
物語は、彼がバス停で居合わせた人に自身の半生を語るという形で進められます。


人より少し知能が劣っているガンプは、
しかしそのたぐいまれなる走力を買われて、大学のフットボールチームのスター選手となります。
次には軍隊に入り、ベトナムで傷ついた仲間を助け、勲章をもらう。
軍隊でふと始めた卓球においても、天才的なその技能で活躍。
除隊してからは、戦争で亡くなった親友の遺志を継いで、エビ漁を始めるのですがそこでも大成功。
損得勘定ではなく、人に勧められるまま、目の前のことにただ一生懸命取り組んでいるだけ。
だからこそなんでしょうね。
よい方へよい方へと道が開けいく。
しかしただ一つ、思うようにならないのが、愛する幼なじみのジェニー。
いつも他の子たちから馬鹿にされていたガンプに、
普通に親しくしてくれて、いつも二人で遊んでいた。
ガンプの人生の歩みと共に、その時々のジェニーの様子も挿入されます。
彼女は独立心旺盛な女性。
けれど何をやってもうまくいかないのです。
時々ガンプと再会し、彼の変わらぬ朴訥さ、ひたむきさに心打たれるのですが、
自分の道を見極めることの方を彼女は優先するのですね。
終盤、ガンプがついにプロポーズをしたときも、彼の元を去ってしまう。
ここのところの気持ちはすごくよくわかるんですよ。
このときのガンプはもうすっかり生活も安定していて、結婚すれば間違いなく幸せになると思える。
けれどジェニーはただ彼の優しさにすがって生きていくことに罪悪感を覚えるのでしょう。
自分では何もできていないのに・・・と。
いかにも自立したジェニーの行動に、納得できます。


そしてもう一人。ガンプに運命を変えられた人物が、軍隊の上官であるダン中尉。
彼は戦場で負傷したところをガンプに救われたのですが、両足を失ってしまいました。
絶望した彼は「あそこで、名誉の戦死をするはずだったのに、おまえに運命を変えられてしまった」
と、ガンプをなじるのです。
・・・けれど彼もガンプと共にいる内に、次第に生きる意欲を取り戻していきます。
ひたすらに駆け抜けていくガンプのさざ波が波紋を広げ、
周りの人たちに大きく影響を及ぼしていく。


30年ほどに及ぶアメリカの移り変わる風俗や文化。
それらを挿入し変転する人生を小気味よく映し出してくれました。
当時ではめざましい技術だったと思いますが、
ケネディ大統領やジョン・レノンとの“共演”シーンなどもあり、そんなところでも楽しめます。


私が笑ってしまったのは、ガンプの戦友であり親友である“ババ”。
彼はいつもいつも家業のエビ漁の話をし続けます。
頭の中はそれしかない。
でもガンプは、ただただ黙って聞いていますね。
そしてまあ、なんと彼の律儀なこと。

ユーモアに満ちていて、そのミラクルな生き様に驚かされ、
そしてまた彼を取り巻く人々の人生も鮮烈。
どこを切り取っても感銘です。

フォレスト・ガンプ [DVD]
トム・ハンクス,ゲイリー・シニーズ,サリー・フィールド,ロビン・ライト,ミケルティ・ウィリアムソン
パラマウント・ホーム・エンタテインメント・ジャパン


「フォレスト・ガンプ/一期一会」
1994年/アメリカ/144分
監督:ロバート・ゼメキス
出演:トム・ハンクス、サリー・フィールド、ロビン・ライト、ゲイリー・シニーズ