映画と本の『たんぽぽ館』

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世にも怪奇な物語

2012年03月09日 | 映画(や行)
心の闇を幻想的に描くオムニバス

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先日読んだ綾辻行人「奇面館の殺人」で、登場人物の女性が夜中に一人で見ていたビデオがこの作品。
文中、若干その内容にも触れられていて興味が湧いたので、さっそく見てみました。


1967年作、エドガー・アラン・ポー作品を原作とした仏・伊3人の監督によるホラー作品のオムニバス。
出演陣も豪華で、これは当時かなり話題となったと思いますが、
今見ると若干地味という印象はぬぐい去れない。
この手のオムニバスはその後いくつも作られていますし、
怪奇さを盛り上げる手法もどんどん進化していますから・・・。
しかし、やたらとおどろおどろしい描写をせず、
心の闇を幻想的に描くという、芸術的香り高い作品群であると思います。


第一部 黒馬の哭く館
監督:ロジェ・ヴァディム
出演:ジェーン・フォンダ、ピーター・フォンダ
伯爵家の後を継いだ令嬢フレデリック。
彼女は高慢で、誰もが彼女の言いなりになるのが当たり前の生活をしています。
しかし、ウィルヘルムという男だけが彼女を無視。
不思議にそんな男に心ひかれてしまうフレデリックだけれども、
無視された腹いせに彼の家に火をかけてしまいます。
ウィルヘルムは馬を助けようとして、火に呑まれあっけなくも死去。
その直後、フレデリックのもとに一頭の美しい黒馬が現れます。
その馬に憑かれたように毎日馬と過ごすようになるフレデリックでしたが・・・。
火事の時になぜかフレデリックの居間にある馬の絵を織った織物が焼け焦げてしまうのです。
黒馬はどこから来たのか? 
馬の絵のタペストリーの由来は? 
ウィルヘルムの心は? 
解説は何もありません。
ただ不思議なことが起こるというだけの・・・。
つまり、いろいろ想像の余地はあるのです。
私は3作の中ではこれが一番好きです。(馬が好きなだけ?)
海岸をゆく馬と伯爵夫人の映像が印象的。


第二部 影を殺した男
監督:ルイ・マル
出演:アラン・ドロン、ブリジット・バルドー
サディスティックでかつ狡猾なウィリアム・ウィルソンという青年がいます。
しかし、彼と同姓同名、瓜二つの男が、ときおり現れては彼の目論見を邪魔しようとする。
あるときついに怒りが爆発して、瓜二つのその男を刺し殺してしまうのですが・・・。
同姓同名で瓜二つとすれば、それはもう、彼自身の分身でしかありえないし、
このような結末は目に見えてはいるのですが・・・。
彼の殺伐とした心の奥底に、そのような自分自身をいとう気持ちが実は潜んでいたということなのかもしれません。


第三部 悪魔の首飾り
監督:フェデリコ・フェリーニ
出演:テレンス・スタンプ
英俳優トビー・ダミットは役者とて一度は名声を得たのですが、
アル中となり、今は仕事もなく落ち目。
そんな彼にイタリアから映画の出演依頼があり、報酬としてフェラーリの新車をもらう。
そしてある賞の授賞式に招かれたが・・・。
幻想と現が交差する不思議な作品。

世にも怪奇な物語 HDニューマスター版 [DVD]
ジェーン・フォンダ,ピーター・フォンダ,アラン・ドロン,ブリジット・バルドー,テレンス・スタンプ
エスピーオー


「世にも怪奇な物語」
1967年/フランス/121分