中華料理店の息子二人。それぞれ青春してます。
* * * * * * * * * *
坪田譲治文学賞受賞作。
まずは冒頭第一章を読んで「あれ?」と思いました。
これは割と最近読んだことがある!
実業之日本社文庫「Re-born 始まりの一歩」というアンソロジーに収められていた一作でした。
その続きがあるとは知りませんでした。
大阪、下町の庶民的中華料理店"戸村飯店"の長男と次男、ヘイスケとコウスケの物語です。
男二人の兄弟という点では、「間宮兄弟」を連想してしまいますが、
あのように地味な「オタク」ではなくて、もっと青春してる二人です。
仲が良いかといえば決して良くはない。
二人はタイプがぜんぜん違うのです。
兄ヘイスケは二枚目で要領がいい。
人当たりはいいけれど、でも店を手伝ったりはしない。
高校を卒業するやいなや、さっさと東京へ出てしまう。
一方弟コウスケは、単純、一直線。
店は文句も言わずよく手伝い、
なんとなくこの店の後を継ぐことになるんだろうなあ・・・と思っている。
密かに兄はずるいと思いつつ。
表面上はまさにそう。けれど実は、
兄ヘイスケは、この家の中でひとり異質であるような気がして馴染めずにいたのです。
作家になると言って東京の専門学校へ行ったのも、単に家を出るための口実。
学校はひと月いただけですぐに辞めてしまいました。
そしてカフェでアルバイトを始めます。
ここで食べ物屋さんを選んだというあたりで、無意識なりの彼の心中が見える気もしますが・・・。
さて、コウスケの方も高校3年の三者面談で「店のあとを継ぐので進学はしない」と言うと、
なんと父親がいきなり怒り出した。
「誰が店継いでいいといった、勝手に甘えるな!」という具合。
どうしていいかわからなくなってしまったコウスケは、
特に親しく語り合うような間柄ではない兄弟ながら、
上京したきり一度も帰らない兄のもとに、相談に行ったりします。
この二人にはそれぞれに魅力があって、ついついはまり込んでしまいます。
彼らが自分の道を見出していくわけですが、
その意外な成り行きも、なんだか納得できちゃうのです。
人生ってそうだよね。
そうじゃなくちゃつまらない。
語り口はユーモラスですが、しっかりとした芯があって、
なんだか生きる勇気が湧いてきます。
東京ではなく、大阪がホームグラウンド。
そこもポイント高いですね。
コウスケが自分とは全く別のタイプ、北島くんと親しくなっていくのも微笑ましい。
そして私が思ったのは、ここのお父さん、お母さんは幸せだなあ・・・ということ。
いい息子たちではありませんか。
まあ、親父さん自身も、当然のように息子に店を押し付けたりしない、
そういうところが、男気いっぱいで素敵です。
こういう親だからこその息子たちではありますね。
大満足の一冊でした。
「戸村飯店青春100連発」瀬尾まいこ 文春文庫
満足度★★★★★
戸村飯店 青春100連発 (文春文庫) | |
瀬尾 まいこ | |
文藝春秋 |
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坪田譲治文学賞受賞作。
まずは冒頭第一章を読んで「あれ?」と思いました。
これは割と最近読んだことがある!
実業之日本社文庫「Re-born 始まりの一歩」というアンソロジーに収められていた一作でした。
その続きがあるとは知りませんでした。
大阪、下町の庶民的中華料理店"戸村飯店"の長男と次男、ヘイスケとコウスケの物語です。
男二人の兄弟という点では、「間宮兄弟」を連想してしまいますが、
あのように地味な「オタク」ではなくて、もっと青春してる二人です。
仲が良いかといえば決して良くはない。
二人はタイプがぜんぜん違うのです。
兄ヘイスケは二枚目で要領がいい。
人当たりはいいけれど、でも店を手伝ったりはしない。
高校を卒業するやいなや、さっさと東京へ出てしまう。
一方弟コウスケは、単純、一直線。
店は文句も言わずよく手伝い、
なんとなくこの店の後を継ぐことになるんだろうなあ・・・と思っている。
密かに兄はずるいと思いつつ。
表面上はまさにそう。けれど実は、
兄ヘイスケは、この家の中でひとり異質であるような気がして馴染めずにいたのです。
作家になると言って東京の専門学校へ行ったのも、単に家を出るための口実。
学校はひと月いただけですぐに辞めてしまいました。
そしてカフェでアルバイトを始めます。
ここで食べ物屋さんを選んだというあたりで、無意識なりの彼の心中が見える気もしますが・・・。
さて、コウスケの方も高校3年の三者面談で「店のあとを継ぐので進学はしない」と言うと、
なんと父親がいきなり怒り出した。
「誰が店継いでいいといった、勝手に甘えるな!」という具合。
どうしていいかわからなくなってしまったコウスケは、
特に親しく語り合うような間柄ではない兄弟ながら、
上京したきり一度も帰らない兄のもとに、相談に行ったりします。
この二人にはそれぞれに魅力があって、ついついはまり込んでしまいます。
彼らが自分の道を見出していくわけですが、
その意外な成り行きも、なんだか納得できちゃうのです。
人生ってそうだよね。
そうじゃなくちゃつまらない。
語り口はユーモラスですが、しっかりとした芯があって、
なんだか生きる勇気が湧いてきます。
東京ではなく、大阪がホームグラウンド。
そこもポイント高いですね。
コウスケが自分とは全く別のタイプ、北島くんと親しくなっていくのも微笑ましい。
そして私が思ったのは、ここのお父さん、お母さんは幸せだなあ・・・ということ。
いい息子たちではありませんか。
まあ、親父さん自身も、当然のように息子に店を押し付けたりしない、
そういうところが、男気いっぱいで素敵です。
こういう親だからこその息子たちではありますね。
大満足の一冊でした。
「戸村飯店青春100連発」瀬尾まいこ 文春文庫
満足度★★★★★