映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

僕達急行 A列車で行こう

2012年03月28日 | 映画(は行)
それぞれのライフ&ワーク



                 * * * * * * * * * *

鉄道オタク、すなわち“鉄ちゃん”の青年二人のストーリー。
昨年12月になくなった森田芳光監督の遺作となりました。
ほのぼのとユーモアに満ちたストーリーの展開に、浸りました。


町工場の一人息子である小玉(瑛太)は、鉄道でも特に“鉄”が好き。
大手企業サラリーマンの小町(松山ケンイチ)は、鉄道でも特に“風景を見ながら音楽を聞く”のが好き。
二人は共通の趣味が縁で知り合い、交友を深めていきます。
だからといって、くどくど鉄道の薀蓄ばかりが披露される物語ではありません。
二人はそれぞれの仕事にも真摯。
でも、仕事が命!というほどでもなく、今風の若者像等身大という気がします。
そして彼らの恋愛観においても、のめり込み過ぎないサラリとした感じ。
もちろん彼女は欲しいし、振られれば落ち込みもするのですが。
小町は付き合っていた彼女に「私と鉄道とどっちが大事?」などと言われてしまうのですが、
そりゃ聞くほうがバカ。
今時の青年は自分のライフスタイルを大事にするのですよ。
すなわち鉄道のほうを・・・。
いえ、それは何もオタク青年に限らず、女子も自分のライフスタイルが大事と思う人が多いと思う。
・・・だからこそ、独身男女が増えているわけで。
実のところ、結婚30ウン年の私は、
そういうのが嘆かわしいとは全然思いません。
羨ましいくらいです。
だからといって、結婚生活がうまくいっていないわけじゃないですよ。
でも、一人ひとりが自立して、好きなことするためにしっかり仕事もして・・・、
そういう世の中も悪くはないなあ、と。
その上で、気が合う人ができたら、結婚してみてもいいじゃないですか。
・・・と、自分で書きながら思うのですが、
確かに私の若かりし頃からすると、世間の「結婚観」自体も変わってきたんですね。



この二人の付き合い方の距離感もいいのです。
同じ“鉄ちゃん”でも、好きな方向は随分違う。
けれどお互いはそれを認め合って尊重しています。
そしてまた、“鉄ちゃん”が縁で人の輪が広がっていく。
小玉の家の工場の経営難、
小町の会社の経営事情、
そういうことが絡まりあいながら進展していくところも小気味良いですね。



私もどこかへ鉄道の旅がしたくなってしまいました。
桜の花が咲くような季節がいいなあ・・・。
小町は雪の北海道がいいなんて言っていましたが。
(私しゃこりごり。)
列車の旅は、ビールを飲んだり、お弁当を食べたりできるし、
本を読んでも快いリズムになぜか集中できる。
車窓の景色もよし。
音楽もよし。
私も大好きです。
でも実際に乗るのはせいぜい年に1~2回かなあ・・・。



さて、小町が出会ったあずささんは、私は初めから「合わない」と思ったのですけれど、
その恋の行方も、お楽しみに。

「僕達急行 A列車で行こう」
2011年/日本/117分
監督・脚本:森田芳光
出演:松山ケンイチ、瑛太、貫地谷しほり、笹野高史、伊武雅刀、松坂慶子