映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「銀の匙 4」荒川弘

2013年03月11日 | コミックス
ずっと答えのないことで悩み続けてたから、「答えのある物」がより鮮明になったのか…!

銀の匙 Silver Spoon 4 (少年サンデーコミックス)
荒川 弘
小学館


            * * * * * * * * *

八軒が名前をつけてしまった「豚丼」が、肉になって戻って来ました。
八軒がこの夏バイトでためたお金で買い取ったのです。
彼が自分自身で食べる。
それが、彼が考えた末の「責任」の取り方だったのでしょう。


以前「ブタがいた教室」という映画で、
「大きくなったら食べよう」ということでブタを飼い始めた小学生の話を見ました。
まさに「命を食べる」ことの究極の意味を問う作品でした。
その時には、私自身確たる結論は出せなかったのです。
まあ、仕方ない結論だったのかな、と。
でもその後
「結局自分たちで食べないのなら意味が無い。
業者に引き渡してそれで終わりというのは逆に無責任なのではないか・・・」
と思うようになりました。
まあ、小学生なので映画の結論は致し方なかったわけではありますが。
自分達で食べないのならはじめから飼うべきではなかった。
そんなふうに思うのです。
そこで本作。
八軒の行動はビンゴ!でした。
八軒はその上、50キロの肉をすべて自分で下ごしらえしてベーコンを作ります。
ものすごく大変な作業だったのですが、
「でもなんか…少しスッキリしました。」
と彼はつぶやきます。
そんなことがあった後、八軒は数学の問題がスラスラと解けてしまうことに驚きます。
ずっと答えのないことで悩み続けてたから、「答えのある物」がより鮮明になったのか…!
数学って美しい…!! と気づく八軒。
そう、数学は案外受験を離れたほうが面白いものなのでしょう、
たぶん・・・(?)
ところで、八軒はこのベーコンを兄にいわれてしぶしぶながら自宅に送ります。
ベーコンが届いた自宅の光景に、たった1カット、父親の顔があるのですが・・・。
こっ、怖い!!
きゃー、これが八軒が嫌い続けている父ですか。
すごい威圧感ですな。
そりゃ、自宅には帰りたくないワ・・・。
しかし、いずれこの父と正面から対峙する時が来るのでしょう・・・。
うう、クワバラ、クワバラ・・・。


さてさてある日八軒は、御影さんと駒場くんが何か言い争いのような雰囲気になっており、
御影さんが泣いているところを目撃してしまいます。
「どうしたんだ?」と聞いても
「なんでもない」「お前には関係ない」というばかり。
二人から疎外されたようで、落ち込んでしまう八軒。
ピザやベーコンのことであんなに頑張って、みんなにも認められたと思ったのもつかの間、
やっばり、よそ者で、あてにならない奴なのかな・・・
そんな風に思ってしまうのでしょう。
そんなときに、蕗の下のコロボックルみたいな校長が言いますね。

生きるための逃げは有りです。
有り有りです。
逃げたことを卑下しないでそれをプラスにかえてこそ、
逃げた甲斐があるというものです。


こんなふうに一人ひとりを見届けてくれる校長なんて珍しいかもしれないけれど・・・、
ウレシイ存在ですよね!

「銀の匙 4」荒川弘 小学館 少年サーデーコミックス

満足度★★★★★