映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

真木栗ノ穴

2013年03月29日 | 西島秀俊
現実か。幻想か。



            * * * * * * * * *


さて、今作の西島秀俊さんは、全然売れない小説家。
ものすごく古い一間きりのボロアパートに住んでいて、気弱そうでなんだかトホホな感じ。
ほう、これまでの作品の雰囲気とはちょっと違いますね。
うん、だけどそれに騙されちゃいけない。
次第に私たちは幻惑されて、その“穴”に引きこまれていきますよ・・・。



売れない作家、真木栗(西島秀俊)は、仕方なく官能小説の執筆を引き受けてしまうのですが、
ネタに困り、つい自分の部屋のことを書き始めます。
ボロアパートの壁もボロボロで穴があいていて、隣の部屋を除くことができる。
隣は若い男の一人暮らしで、時々女が遊びに来る。
もう片方の隣の部屋は空き室なのだけれど、ある日若い女性が越してきます。
その女性を覗き見る見るうちに、彼は彼女のとりこになっていく。
そしてあるとき、妄想をふくらませて書いたストーリーと同じ事が現実にも起こり始めます。



だんだん、どれが現実でどれが妄想なのかわからなくなってくるよね。
私は、真木栗がひっきりなしに飲んでいる頭痛薬のための幻覚かと思ったんだけれど。
現実か・・・幻覚か・・・はたまた妄想か。
しかし更には、これってオカルトらしい様相も見えてくるよね。
彼のところに来ていた宅配便の配達員、置き薬の営業マン・・・、その謎の死。


この作品、鎌倉が舞台というのにもなんだか意味がありそうだね。
古都鎌倉の釈迦堂の切通し。
あそこをくぐり抜けると異世界に通じるような・・・。

古い町並みに瑞々しい緑。
そんな中で白昼夢のように官能的で幻想的に進行するストーリー。
真木栗はその世界に翻弄されているのだけれど、実は支配しているようにも思えてくる。
いつしか幻想は時のループとなっていくんだね。
こうなると真木栗自体も実在しているかどうか怪しくなってくる・・・



不思議で怖い話なのだなあ・・・
ヒントと言うか、取っ掛かりは隣に住む若い男かな。
彼が真木栗を見る目。ジロジロと単に失礼なのではなくて・・・、ということだね。
紛れもなく現実を生きている人。それが隣の兄ちゃんであり、編集者の女性であるけれど・・・
その他はどうだったのか・・・?
どうなんでしょう???
結局どこが始まりでどこが終わりなのかもよくわからなくなってくる。
興味深い作品でした~。

真木栗ノ穴 [DVD]
西島秀俊,粟田麗,木下あゆ美,キムラ緑子,北村有起哉
ポニーキャニオン


「真木栗ノ穴」
2007年/日本/110分
監督:深川栄洋
原作:山本亜紀子(「穴」)
出演:西島秀俊、粟田麗、木下あゆ美、キムラ緑子、北村有起哉

非現実度★★★★★
生活感★★★★☆
満足度★★★★☆