映画と本の『たんぽぽ館』

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「花や散るらん」 葉室麟

2013年03月08日 | 本(その他)
いのちの花が散っているのだ・・・

花や散るらん (文春文庫)
葉室 麟
文藝春秋


            * * * * * * * * *

京の郊外に居を構え静かに暮らしていた雨宮蔵人と咲弥だったが、
将軍綱吉の生母桂昌院の叙任のため、上京してきた吉良上野介と関わり、
幕府と朝廷の暗闘に巻き込まれてしまう。
そして二人は良き相棒である片腕の僧、清厳とともに江戸におもむき、
赤穂・浅野家の吉良邸討ち入りを目の当たりにする事となるのだが。


            * * * * * * * * *

「いのちなりけり」の続編です。
表紙イラストではっとさせられますが、
蔵人が小さな女の子を抱いています。
もしやこれは・・・! 
そうです。
蔵人と咲弥に、子供ができていたのでした。
さて、今回はなんとあの忠臣蔵、赤穂浪士の討ち入りに
二人は巻き込まれていきます。


前作もそうでしたが、幕府と朝廷のいざこざ。
それが根底にあります。
この対立関係は「平清盛」のドラマにありましたが、
武士がどんどん力を付けていく最中には「朝廷の犬」などと呼ばれていましたね。
武士の世を目指した清盛も、
結局は朝廷の規範の中での最高位を目指していたわけですよね。
時代は代わり、江戸幕府が完全に政権を握ってからも
やはり武士は、朝廷の権威には弱い。
結局そういうところは変わらないのですね。
今作は徳川綱吉の生母桂昌院の叙任をめぐって、
陰湿な朝廷と幕府の争いが繰り広げられます。
結局めぐりめぐってとばっちりは、
吉良上野介と浅野内匠頭に振りかかる。
中でも精神的に追い詰められた浅野内匠頭の刃傷沙汰は
哀れとしかいいようがありません。


歴史オンチの私でも知っている赤穂浪士の討ち入りを題材に取り入れたためか、
前作よりも読みやすく感じました。
また今作では咲弥は江戸城大奥に入るのですが、
あわや貞操の危機という場面もありまして、なかなかスリリングです。
そして二人の子供、香也にも驚きの秘密が・・・。
ひたすらに妻と娘を守ろうとする蔵人。
まさに漢(おとこ)だなあ・・・と、感服。
やはり凛として美しい、葉室ワールドでした。

「花や散るらん」葉室麟 文春文庫
満足度★★★★☆