映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

アイアン・スカイ

2013年03月25日 | 映画(あ行)
iPhoneで息づく地球侵略



            * * * * * * * * *


第二次世界大戦後、ナチス第三帝国の一部のエリートが密かに月へ逃亡。
月の裏側に秘密基地を作り、復讐の機会を伺っていた。
・・・70年後、2018年。
アメリカの宇宙船が、月の裏側に着陸。
飛行士は黒人。
彼はナチスの基地という信じられないものをそこで見るのです。

ナチスが彼を捕獲することにより、ついにナチスの地球侵略が開始される・・・



ものすごくユニークかつ大胆な発想。
私はこれをちょっとワクワクするSFパニック作品かと思っていました。
ところがですね、実際はかなりチープで、B級臭漂う作品なのです。
でもたぶんそれは、“SF”という思い込みに囚われていたから。
実はこれはSFというよりは“風刺”作品と思ったほうが良い。



ナチスはもちろんのことですが、
本作はアメリカの利己的な国家や政治家へ向けての痛烈な皮肉となっているのです。
作中チャップリンがヒトラーを痛烈に批判した作品「独裁者」が登場することを見ても、
本作、かなり世相への皮肉を込めているのがわかります。
そういうふうに考えれば、
ナチスの宇宙船などのメカは結構かっこよく凝っていまして、
出来すぎに思えるくらいです。



ナチスのマッドサイエンティスト的博士は、コンピュータを使っていますが、
それが一部屋の壁中を覆う巨大コンピュータ。
しかし、アメリカ人宇宙飛行士が持っていたiPhone1個の方が、
その巨大コンピュータよりも性能が良い。
さもありなん。
こんなにも地球上の科学技術の進歩は早い。
・・・でもね、ナチスは多くの宇宙船を作ってましたね。
そのテクノロジーこそ実はすごいのでは・・・?
などと思ったりする。



期待したよりもチープで、なんだかなあ~などと思ってみていたわりに、
最期には意外に満足感を覚えていたという不思議な作品です。

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「アイアン・スカイ」
2012年/フィンランド・ドイツ・オーストリア/93分
監督:ティモ・ブオレンソラ
出演:ユリア・ディーツェ、クリストファー・カービー、ゲッツ・オットー、ペータ・サージェント、ステファニー・ポール

発想力★★★★★
皮肉度★★★★★
満足度★★★☆☆