映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ルート・アイリッシュ

2013年03月18日 | 映画(ら行)
たまたま運が悪かった?



            * * * * * * * * *


イラク戦争に於いて、バグダッド空港と市内の米軍管理地域「グリーン・ゾーン」を結ぶ12㎞の道路は
「ルート・アイリッシュ」と呼ばれ、世界一危険な道路と言われていました。
米軍の要人を狙うテロリストにとって、第一目標となる地点であったためです。
イギリスの民間警備兵であるファーガスは、
兄弟同様に育った親友のフランキーをそのルート・アイリッシュで亡くします。
彼は当局が発表した「たまたま運が悪かった」というフランキーの死因に納得できず、真相を探ろうとします。



この作品で浮かび上がる、“軍隊”ではなく“民間の軍事企業”というもの。
これは当然のことながら、国の利害ではなく経済性のみを目的としているわけです。
イラク戦争が「戦争の民営化」とも呼ばれる所以です。
つまりは戦争を食い物にしている。
ただでさえ、戦争にはそういう側面がつきものですが、
ここではそれが前面に出てしまっているのが、余計救いようがない。
なんとも醜くてやるせないですね・・・。



ファーガス自身もPTSDでアルコール漬けになっていたのです。
つまらぬことでケンカがおこり、留置所に入れられていたとき、
フランキーからの電話が何度も何度もケータイに入っていたのでした。
何か助けを求めていたのかもしれない。
しかしそれに応えることができなかった自分にたまらなく罪悪感を持っているのです。
そもそもイラクに彼を呼び寄せたのも自分自身。
ファーガスは帰らぬ親友を思い、
また罪悪感のあまり、次第に復讐の狂気にとりつかれていきます。
決して正義の戦士というわけでもないところが、
やはりこの戦争のやるせなさをかき立てているのです。



どんな時にも忘れたくないのは、現地の人々。
非戦闘員であり、普通の生活を続けている人々のこと。
少年時代に夢を語り合ったファーガスとフランキーが、
共にこれらの人々を大切にしたいと思う気持ちは、
救いようがない中でも、ほのかに光っていました。

 

ルート・アイリッシュ [DVD]
マーク・ウォーマック,アンドレア・ロウ,ジョン・ビショップ,ジェフ・ベル,ジャック・フォーチュン
角川書店



「ルート・アイリッシュ」

2010年/イギリス・フランス・ベルギー・イタリア・スペイン/109分
監督:ケン・ローチ
脚本:ポール・ラバーティ
出演:マーク・ウォーマック、アンドレア・ロウ、ジョン・ビショップ、ジェフ・ベル、タリブ・ラスール

真実の切り取り度 ★★★★★
満足度★★★★☆