映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「時の罠」 辻村深月他

2014年10月27日 | 本(その他)
時の不思議さ、果てしなさ

時の罠 (文春文庫)
辻村 深月,湊 かなえ,米澤 穂信,万城目 学
文藝春秋


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辻村深月、万城目学、湊かなえ、米澤穂信
―綺羅、星のごとく輝く人気作家たちによる、"時"をテーマにしたアンソロジー。
小学校時代に埋めたタイムカプセルがほどくこじれた関係、
配置換えになった「縁結び」の神様の新たな仕事、
人類には想像もつかない悠久なる物語…。
"時間"が築いたきらびやかな迷宮へ、ようこそ―。


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タイムスリップものが大好きな私、
本作はそういう方向をチョッピリ期待していましたが、
残念ながらタイムトラベルはなし。
でも、時の不思議さ、悠久の時の気の遠くなるような果てしなさ・・・
不思議な感覚に陥りました。
冒頭辻村深月さんと巻末湊かなえさん、
双方「タイムカプセル」がかぶっているのですが、
それが返ってそれぞれの持ち味が強調され、
面白い効果をあげています。


辻村深月「タイムカプセルの8年」
実際にタイムカプセルを埋めた当人たちではなく、その父親たちの物語。
子育てに積極的にも熱心にもなれない父親。
子供にはやたら人気があったけれども、
本来の「授業」が全くできていない、いい加減な教師。
しかしいつしか父親も成長する・・・。


湊かなえ「長井優介へ」
15年前の小学6年のとき・・・、
クラスの子供達に虐められていた僕が、
タイムカプセルを掘り出す集まりに向かう。
実は彼はタイムカップセルに青酸カリを忍ばせていた・・・。


考えてみると「夢」は時を自由に移動できるわけで、
時のテーマにはもってこいの題材。
万城目学さんが、コミカルにストーリーを運びます。


そして米澤穂信さんは壮大なSF的に時の壮大なスケールを描きます。
時間の感覚が異なる異生物
・・・そういうことは本当にありそうな気がします。


「時の罠」辻村深月他 文春文庫
満足度★★★☆☆