書くことに囚われた女たち
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あなたの本当の人生は (文春文庫) |
大島 真寿美 | |
文藝春秋 |
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「書くこと」に囚われた三人の女性たちの〈本当の運命〉は――
新人作家の國崎真実は、担当編集者・鏡味のすすめで、
敬愛するファンタジー作家・森和木ホリーに弟子入り――という名の住み込みお手伝いとなる。
先生の風変わりな屋敷では、秘書の宇城圭子が日常を取り仕切りっていた。
書けなくなった老作家、その代わりに書く秘書、ギャンブル狂の編集者、老作家の別れた夫……
真実の登場で、それぞれの時間が進み始め、女三人の生活は思わぬ方向へ。
その先に〈本当の運命〉は待ち受けるのか?
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「渦 妹背山婦女庭訓 玉結び愛」で第161回直木賞を受賞した大島真寿美さんの作品。
私には初めての作家さんです。
本作は少し不思議な味わいのある物語。
新人作家とは言いながらさっぱり芽が出ない國崎真実が
担当編集者のすすめで敬愛するファンタジー作家・森和木ホリーに弟子入りします。
ところが弟子と言いながら住み込みのお手伝いのような感じ。
そしてそこではホリー先生の秘書・宇城圭子がすべてを取り仕切っています。
結局真実はあまりすることがなく、のらりくらりと猫のような生活を始めるのですが、
いつしか、肉屋のバイトで鍛えたコロッケ作りが仕事のようになっていく・・・。
宇城は以前ホリーに「あなたの本当の人生はここにはない」と言われ、
市民会館の事務員をやめてホリーの元へ来たのでした。
それ以降彼女は「本当の人生」という言葉に縛られている。
本当の人生って何?
ホリーに仕えることが自分の本当の人生なのか?
それとも何か他に・・・?
それだから彼女は、他の人にもつい聞いてしまうのです。
「あなたの本当の人生は・・・」
そんな時を過ごしながら、この3人はそれぞれ、何かを書き始めます。
三者三様の理由で何かが湧き出てくるように・・・。
彼女らの本当の人生は「書く」ことにつながっていたようです。
けれどもそれはすぐに作家の成功へとつながっているわけではない。
でもいつか誰かにそれは認められる日が来るだろうと思えるのです。
「書く」と言うことの著者の思いがにじみ出る作品だと思いました。
と言うことで本作は、2014年直木賞候補作でもあります。
「渦」は未読ですが、本作もステキな作品です。
図書館蔵書にて(単行本)
「あなたの本当の人生は」大島真寿美 文藝春秋
満足度★★★★.5