帰りがたい故郷の災害
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東日本大震災を題材としたオリジナル脚本。
監督・脚本が奥田瑛二さん、
スーパーバイザーとして安藤和津さん、
主演に安藤サクラさんと柄本佑さんのお二人、
と言うことでモロにファミリー映画じゃん・・・
などと突っ込みを入れるのが場違いなくらいに、じっくり訴えかける作品です。
南三陸町を故郷とする今日子(安藤サクラ)と修一(柄本佑)、
それぞれを描き出しますが、実際に二人には接点はありません。
まずは今日子の場合。
夫が病に冒され、一家の生計を担わなければならなくなった今日子。
保険外交員の仕事に就きますが、
上司から強要されてやむなく関係を持ってしまいます。
しかしそのことがバレて、家族から非難され、故郷を追われてしまいます。
まだ幼い子供もいたのに。
そして修一の場合。
暴力的な父親から母親を守るため、父を殺害してしまい、少年刑務所に服役。
刑期を終え、東京へ出て町工場で働き始めます。
東京で新たな生活を始めた二人。
そんな時に大震災が起こります。
故郷の家族には連絡も取れず安否も確認できません。
いえ、連絡をとることが可能だとしても、
自分はすでに追い出された身でもある・・・。
故郷の大きな災害を、遠く手の届かないところから
テレビなどを通じて見るしかないつらさ切なさに加えて、
とにかく今、自分の生活をなんとかしなければならない重圧。
ようやく二人が故郷に戻るのは、およそ一年の後。
すっかり波にのまれた街は、大きな建物の残骸や、家のあったらしき土台が残るばかり。
この何もないところから、また始めるのだ・・・
そう思って、二人はそれぞれに歩き始めるのでしょう。
この二人は人を殺めてしまったけれど、
この町ではあの日、あまたの人の命が失われた。
命の重みのあまりの軽さにおののきながら、
それでもやはり、それは大切なものだったという気持ちも同時にわいてきます。
震災を扱った中では、秀逸な作品だと思います。
<Amazon prime videoにて>
「今日子と修一の場合」
2013年/日本/135分
監督・脚本:奥田瑛二
スーパーバイザー:安藤和津
出演:安藤サクラ、柄本佑、和田聰宏、小篠恵奈、和音匠
人生ドラマ度★★★★★
震災を考える度★★★★☆
満足度★★★★☆