踏みつけにされるウクライナ
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ソビエト連邦、悪名高きスターリン時代のストーリーとなれば、
どんなに非人道的な話なのかと想像がつき、逆に見たくもないと思ってしまうのですが、
本作それがウクライナに関わる話ということで、ぜひ見なければ!と思い直した次第。
スターリン体制のソ連という大国に1人立ち向かった
ジャーナリストの実話を元にしたドラマです。
1933年。
世界中が大恐慌にあえいでいます。
ヒトラーへの取材経験を持つ若き英国人記者、ガレス・ジョーンズ(ジェームズ・ノートン)は、
こんな中でなぜソ連だけが繁栄を続けているのか疑問を持ちます。
このことを知りたくて、彼は単身モスクワを訪れるのです。
外国人記者を監視する当局の目をかいくぐり、
疑問の答えが隠されている、当時ソ連の一部であるウクライナ行きの列車に乗り込みます。
凍てつくウクライナの地で、ジョーンズが目にしたものとは・・・!!
ウクライナといえば名うての穀倉地帯。
ソ連はそこで「集団農場」の取り組みを行っていたのですね。
地理だか歴史だかで習ったなあ。
コルホーズとソフホーズ。
どっちがどうなのか未だによく分かっていないけれど・・・。
ところがそれがうまくいっていなくて、ウクライナでは大飢饉が起こっていたのです。
食料が何もなく、道ばたに餓死者が転がっていたりする惨状をジョーンズは目にします。
そんな中でも、なけなしの穀類の袋が大量にモスクワに送られていく・・・。
ウクライナに死体の山を築きながら、肥え太っているソ連という国。
本作で恐ろしいのは、このウクライナの惨状ばかりではありません。
このことをひた隠しにするソ連当局。
そして当局の都合の良いことばかりをかき立てる、
各国の在モスクワ記者たち(真実を書けば、命の危険があるのは確かですが)。
またさらには、英国でも、国交上の都合から
ジョーンズのウクライナの真実を伝える記事は、
でたらめだと決めつけられてしまうのです。
こんな中で、一般市民は何が真実なのかなど分かりようがない・・・。
恐ろしいことですが、それは今のこの時代も全く変わらないわけですね。
こんな風に、一方的にロシアから踏みつけにされたウクライナという歴史があるからこそ、
この度のようなロシアの侵略には命をかけても抗うという人々の決意が、
一層重く感じられます。
とはいえ、本作自体も一方的に見たものではある、
ということだけは一応忘れずにいたいと思います。
個人的には、プーチンなんかゴルゴ13に狙撃されてしまえ!と思っていますが。
<Amazon prime videoにて>
「赤い闇 スターリンの冷たい大地で」
2019年/ポーランド、イギリス、ウクライナ/118分
監督:アグニエシュカ・ホランド
出演:ジェームズ・ノートン、バネッサ・カービー、ピーター・サースガード、
ジョゼフ・マウル、ケネス・クラナム
歴史発掘度★★★★★
非人道度★★★★★
満足度★★★★☆