映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

水を抱く女

2022年03月02日 | 映画(ま行)

ウンディーネ、命をかけた恋

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水の精・ウンディーネの神話をモチーフとしています。

ベルリンの都市開発を研究するウンディーネ(パウラ・ベーア)は、
博物館でガイドとして働いています。
そんな彼女がある日、恋人ヨハネスから別れ話を告げられ、
「私を捨てるなら、殺す」と、強いまなざしで男を見据えるのです。
こんな強烈な場面から始まる本作。

ところがそのすぐ後、彼女は潜水作業員のクリストフ(フランツ・ロゴフスキ)と出会い、
恋に落ちるのです。
ウンディーネはこの恋に満ち足りたはずなのですが、
でも心の片隅にヨハネスへの心残りがまだくすぶっているようで・・・

「殺す」とまで言い放った情感は、そう簡単には打ち消すことができないのかも知れません。
神話のウンディーネは人間の男の愛によって魂を得るのですが、
男に裏切られ、男を殺して水中へ帰って行くのです。
「人魚姫」の童話も、この話が大もとなのかも知れませんね。

本作のウンディーネは結局誰を見捨て、誰を救おうとするのか、
そして自身はどこへ行くのか。

しっかり現代の街並みを描きつつもどこか幻想的。
独特な雰囲気を持った作品です。
ベルリンの街の模型のある博物館もいいですね。

そうそう、クリストフが溺れたウンディーネに心臓マッサージをするときに、
「スティン・アライヴ」を歌うシーンがあります。
救命講習でそのようにならった、と。
実は私も講習を受けたことがあるのですが、
講師は「もしもし亀よ」がいい、と言っていました。
そのリズムと回数がちょうどいい、ということで。
さすがヨーロッパ、「もしもし亀よ」より
「スティン・アライヴ」の方がカッコイイですよねえ・・・。

 

<WOWOW視聴にて>

「水を抱く女」

2020年/ドイツ・フランス/90分

監督・脚本:クリスティアン・ペッツオルト

出演:パウラ・ベーア、フランツ・ロゴフスキ、マリアム・ザリー、ヤコブ・マッチェンツ、

   アネ・ラテ=ポレ

 

女の情念度★★★★★

幻想性★★★★☆

満足度★★★★☆