女たちは軽々としがらみを脱ぎ捨てる
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東京の松濤の上流家庭で箱入り娘として育った20代後半の華子(門脇麦)。
彼女は、家族の考えと同じく、結婚こそが女の幸せと信じて疑いません。
結婚を考えていた恋人に振られ、その後焦ってお相手探しに奔走しはじめます。
そして、政治家も出る名家のイケメン御曹司、
弁護士の幸一(高良健吾)との結婚が決まります。
一方、富山から一流大学入学を果たし上京した美紀(水原希子)。
しかし親からの仕送りが不能となり、バイトを始めるもやりくりできず、とうとう退学。
それでもそのまま東京にしがみついて、なんとか仕事に就いたのです。
そんな二人が、思わぬ縁で出会い、それぞれ思いも寄らない世界が開けていく・・・。
私、生まれも育ちも北海道。
上流家庭の生活なぞは、それこそ映画やドラマで垣間見るだけですが、
実際にいるのですねえ・・・、東京の「お嬢様」。
お金があるのはうらやましいけれど、でもああした結婚観にはとてもついて行けません。
その家父長的考えは戦前と変わらないじゃないですか!!
今時「家事手伝い」という表現があるとは・・・。
正直、別れた彼氏が「結婚は無理」といった気持ちも分かる気がします・・・。
そんな華子ですが、必ずしも色恋沙汰をムダと思っているわけではなく、
幸一にはちゃんとぽ~っとなったのです。
そりゃそうですよね。
イケメン、高身長、高学歴、弁護士で物腰も洗練されている。
文句なし!!
しかし、次第に分かってくるのですが、彼自身も窮屈な「名家」の一員。
好むと好まざるとに関わらず、あらかじめ人生のレールは敷かれていて、
彼自身の夢も希望もなく、淡々とその上を進むしかない、と諦めきっている。
そんな息抜きに、ちょっと他の女の子と付き合ったりもするわけです。
ただし、結婚相手は家族も認める「マトモ」な娘でなければならない。
さて、全く別の階層の住人、華子と美紀が邂逅したとき・・・。
実はそれは修羅場となるべきところなのかも知れないけれど、そうはなりませんね。
互いに今とは違う生き方が実はあるのではないか、そういう気づきの場となるのです。
そしてまた双方共に、本心を相談できる良き友人がいて、彼女たちを支えます。
生き方を変えたいと思うとき、
女たちはこれまでのしがらみを気持ちいいくらいにさらりと脱ぎ捨てます。
多分男性のように地位や名誉にしがみつかないからかもしれません。
実は自分は自由だと気がつきさえすれば良い。
ラストシーンで、華子が幸一に遠くからほんの少し笑いかけるのですが、
おそらくこのとき幸一は「この人はこんな風に笑うことができたのか」と
驚いたのではないでしょうか。
もしかして、華子は戦後の女性史を一人で体現して見せた・・・?
美紀の凜として軽やかな生き方も、好きです。
あ、それと石橋静河さん演じる華子の友人逸子も大好き。
<WOWOW視聴にて>
「あのこは貴族」
2021年/日本/124分
監督・脚本:岨手由貴子
原作:山内マリコ
出演:門脇麦、水原希子、高良健吾、石橋静河、山下リオ
女性の生き方度★★★★★
階層格差度★★★☆☆
満足度★★★★☆
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