映画と本の『たんぽぽ館』

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アンモナイトの目覚め

2021年04月19日 | 映画(あ行)

潮風に吹かれて

* * * * * * * * * * * *

ケイト・ウィンスレット × シアーシャ・ローナンと言うことで、これはやはり見逃せません。

 

1840年代、イギリス、海沿いの田舎町。

メアリー・アニング(ケイト・ウィンスレット)は、
海岸でアンモナイトなどの化石を拾い、土産物として売ることで生計を立てています。
独身、母親との2人暮らし。
そんなところへ、裕福な化石収集家が訪ねてきます。
そして、気鬱の妻・シャーロット(シアーシャ・ローナン)をしばらく預かって欲しいという。

メアリーはお金のために渋々引き受けますが、美しく可憐なシャーロットに苛立ちます。
しかし、シャーロットが高熱で倒れ、その看病をするようになってから、
互いに少しずつ心を開き、親しみを抱くように・・・。

メアリーは子どもの頃に貴重な化石を掘り出し世間を賑わせました。
その化石は今も大英博物館に展示されています。
その後も地道に化石を発掘しているメアリーですが、
その存在は今ではほとんど忘れかけられているのです。
というのも、彼女は労働者階級でしかも女。
本来なら研究部門で相当な地位を得てもおかしくないところですが、
そんな彼女を気に懸ける人もいないのです。
遅れて化石ブームにはまったシャーロットの夫のような人以外は。

シャーロットの夫は化石に夢中で、妻のことは全く気に懸けません。
流産が原因で鬱になりかけたシャーロットを鬱陶しく思うのです。
子どもを産まない妻や、いつも暗い顔をした妻など、
役に立たないとでも言うように・・・。
実際上流階級の女性は、夫にそれくらいのことしか期待されていないのです。
家事はするべき事ではない。
だからシャーロットはメアリーの家では手伝おうと思っても何もできない。
男社会は女を子どもを産む機械か、あるいはただの飾り物としか見なさない。
でもそれは上流社会のこと。
下流の庶民は男女にかかわらず、家事を含めてとにかく一日中働き回らなければなりません。
特に男手のないメアリーのところでは。
つまり自立してお金を稼いでいるメアリーは、
当時としては「男性」に近い位置にいるのです。
女同士ではありながら、2人の心が接近していく背景には
そんなところもあるのかもしれません。
そして男が作った社会のルールなんか、知ったことではないというような
開き直りもあるのかも。

自立しているメアリーは、どうしたって「飼い犬」のようにはなれないのです。
貧乏だろうと仕事がきつかろうと、それは彼女自身の「自由」のため。
そして何より、お金のためとは言いながら、彼女は化石が大好きなんですよね。
自分自身の立場に納得はしていないけれど、
何者にも縛られず、化石の発掘をできることで良しとしている。
それがわからないシャーロットは、やはり男社会に染まった「女」なのでしょう。

田舎町で見るメアリーのりりしさの反面、
ロンドンの街で見るメアリーの貧しく心許ない様子。
このギャップはちょっともの悲しくもありますが・・・。
野に咲く花は、やはり野において見るべし!

寒々しく波の打ち寄せる海岸の光景と、2人の女性。
印象的なシーンです。
かなりきわどいシーンもあるので、ロマンチックを期待したい方はご注意を。

<シアターキノにて>

「アンモナイトの目覚め」

2020年/イギリス/117分

監督・脚本:フランシス・リー

出演:ケイト・ウィンスレット、シアーシャ・ローナン、ジェマ・ジョーンズ、
   ジェームズ・マッカードル、アレック・セカレアヌ

 

性愛度★★★★☆

満足度★★★.5

 

 



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