心の闇を照らし出す、灯り
* * * * * * * * * * * *
全編35ミリ白黒フィルム、スタンダードサイズ。
と言われてもそういうことに全然詳しくない私ですが、
まさしくすべてモノクロで、いかにもクラシカル。
というのも舞台が1890年代ということで、
そういう生々しく古い因習めいた雰囲気がたっぷりです。
ニューイングランドの孤島に4週間灯台と島の管理を行うために
2人の灯台守がやって来ます。
ベテランのトーマス・ウェイク(ウィレム・デフォー)と、
未経験の若者、イーフレイム・ウィンズロー(ロバート・パティンソン)。
トーマスはまるで暴君のように威張り散らし、イーフレイムをこき使います。
イーフレイムは、掃除や石炭運びなどの雑用ばかりをさせられ、
肝心の灯室には入れてももらえません。
どうにもソリが合わず、不信感ばかり募らせていく2人。
やがて、凄まじい嵐が島を襲う・・・。
そもそもこの島への上陸時からすでに不穏で、
おどろおどろしい雰囲気が立ちこめています。
ときおり響く霧笛の音は、まるで地の底の怪物が放つ咆哮のよう・・・。
登場人物はこの2人のみ。
外界とは断絶されたこの小さな島で起こることは幻想か、狂気か・・・。
ライトハウスといえば、日本では単に「灯台」ですが、
キリスト教では教会とか神のようなものをイメージすることがあるようです。
ゴスペルの歌詞に良く出てきます。
灯台の光は真実を照らす光であり、
私たちのような真理に対して盲目であるものを導く灯りでもある、ということで。
そして、この2人はそれぞれにある“罪”を隠し持っているのです。
普段はそんなことも自分では忘れたフリをしていますが、
胸の底では罪悪感を抱えていて、その罪におののいている。
そんな胸の奥底の暗がりを、灯台の光が浮かび上がらせるということなのでしょう。
映像に映し出される光景はゾッとするくらいに不潔で不衛生。
当時の離れ小島でのことなので、こんなものなのかもしれません。
そして嵐になれば外と変わらぬほどの雨漏り、
ついには大波が部屋の中まで押し寄せてきます。
こんな混乱の中で彼らは憎悪をむき出しにしていく。
その幻想感は白黒の映像で一層の効果を上げているようです。
ときおり映し出される異様なシーンはおそらくギリシャ神話に由来するものだと思います。
もっとギリシャ神話をよく知っていれば良かった、と思ってしまう。
残念。
一番最後のシーンはおそらく「プロメテウス」でしょう。
ロバート・パティンソンとウィレム・デフォーは
そうと言われなければわからないくらいに、粗野な灯台守になりきっています。
ただただ、圧倒されてしまう作品でした。
<シアターキノにて>
「ライトハウス」
2019年/アメリカ・ブラジル/109分
監督:ロバート・エガース
出演:ロバート・パティンソン、ウィレム・デフォー
時代性★★★★☆
おどろおどろしさ★★★★★
満足度★★★★☆
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます