性格は真逆でも、魂の形は同じ
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最高に甘美で残酷な女子大河小説の最高峰
ののとはな。
横浜の高校に通う2人の少女は、性格が正反対の親友同士。
しかし、ののははなに友達以上の気持ちを抱いていた。
幼い恋から始まる物語は、やがて大人となった2人の人生へと繋がって……。
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「ののはな通信」、何やらほのぼのとした題名なのですが、
実のところシビアでしんどい気持ちにもさせられる作品。
“のの”こと野々原茜と、“はな”こと牧田はなは、高校の同級生で親友同士。
本作は、すべてこの2人が交わした手紙から成り立っています。
手紙ばかりでなく、授業中に回したメモや、うんと後の時代にはメールも。
はじまりは昭和59年。
「日出処の天子」は傑作、などという話題から始まるのが、
私にはガッチリのツボでした。
そうなんです。
このすごさを語り合える人となら、私も親友になれると思う。
まあ、そんな他愛のない女子のトークから始まる手紙のやりとりなのですが、
ののは、はなに友だち以上の感情を抱いていたのです。
やがてその気持ちは通じて、2人は友だち以上の関係に。
けれど、そんな蜜月のような時もつかの間、
やがて苦い別れの時が来ます。
でも2人の手紙のやりとりは、そこまででは終わりません。
学生時代に、また少し友人付き合いと手紙のやりとりが復活。
けれどそれも、はなが結婚に踏み切ろうとするところでまた、途切れてしまいます。
その後の中断が約20年。
ののはライターの仕事をしていて、
はなは、外交官の妻としてアフリカのゾンダという内紛の絶えない小国にいます。
遠く離れた地にいても、このときにはメールという手段が使えるので、便利。
しかしそんな時に、この国でまた新たな内紛が持ち上がり・・・。
それぞれの地で、全く別の生活をしながらも、
2人は互いにすぐそばにいるような気がするのです。
相手に向けて言葉を紡ぐことで、自分の考えを整理しているようにも見受けられる。
すぐ近くにいなくても、互いにわかり合い、支え合っている。
2人はそのように確信していく。
それだからはなは、それまでのはなでは考えられない決断をするのです。
人と人との絆には性別なんか関係ないし、体の関係の有無も関係ないなあ
・・・と、納得させられる作品であります。
この2人は、性格はそれぞれだけれども、
多分魂の形が同じなのだろうと思いました。
「ののはな通信」三浦しをん 角川文庫
満足度★★★★☆
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