命名から始まる大論争
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2010年フランスで上演された舞台「名前」を、ドイツで映画化したもの。
なるほど、舞台はほとんど1つの家の中。
登場人物の「会話」がすべてと言ってもいい作品なので、
おそらく元は舞台劇なのだろうなあとは思いました。
文学教授のステファン(クリストフ・マリア・ヘルプスト)と妻エリザベス(カロリーネ・ペータース)が
ディナーの準備をしているところから始まります。
招かれたのはエリザベスの幼なじみで、一家と親しく交流している音楽家のレネ(ユストゥス・フォン・ドーナニー)、
エリザベスの弟トーマス(フロリアン・ダービト・フィッツ)、
そしてトーマスの恋人アンナ(ヤニナ・ウーゼ)。
アンナは妊娠していて、出産間近です。
そんなわけで、トーマスがまもなく生まれてくる子供の名前を決めた、と言うのです。
その名前が、「アドルフ」。
一同、色めき立ちます。
なに、あのヒトラーと同じ名前?!
それは絶対にダメだ、独裁者と同じ名前だなんて、きっといじめられる・・・。
特にステファンは弁を尽くして反対しますが、
トーマスもあれやこれやと反論。
すっかり雰囲気が悪くなってしまいます。
しかしこの話題は実はほんのきっかけにしか過ぎません。
頭に血が上った面々は、やがて互いの秘密やこれまで口に出して言えなかったようなことまで、
暴露し合いはじめて・・・。
言葉と言葉の応酬。
日本人はこういうことは不得手なので、
もしこんな場に居合わせたら何も言えずに隅の方でうつむいているしかないでしょうね。
自己主張、大いに結構。
とは思いますが、ここまで言いすぎになってしまう危険性もあるということですね。
言ってはならないこと、というのは確かにある。
でもこの人たちは、アンナをのぞいては皆幼なじみで、
幼い頃から付き合いが深かったようなのです。
言いたいことを言って、互いに傷ついて・・・。
でもラストシーンを見れば意外と元に戻っているように見受けられたのが、嬉しいところ。
何か不満があって言いたいことをため込んで・・・。
けれど普段はその不満以上の信頼をもって生活しているということなのでしょう。
そこが大事。
人と人とのつながりは、案外修復力高いのですね。
<WOWOW視聴にて>
「お名前はアドルフ?」
2018年/ドイツ/91分
監督:ゼーンケ・ボルトマン
出演:クリストフ・マリア・ヘルプスト、カロリーネ・ペータース、フロリアン・ダービト・フィッツ、
ユストゥス・フォン・ドーナニー、ヤニナ・ウーゼ
論争度★★★★★
満足度★★★★☆
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