人の“思い”はどこへ行くのだろう・・・
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題名だけ見るとホラー作品のようで怖そうなのですが、
これはホラーではなくて・・・ファンタジーともいうべき作品。
田舎の一軒家で暮らす若い夫婦がいました。
ある日、夫が交通事故で亡くなってしまいます。
病院のストレッチャーに横たわった遺体には白いシーツが被せられています。
・・・やがて、白いシーツの下の“何者か”がムクリと起き上がり、自宅の方へ歩み始めます。
どうやら夫は幽霊になってしまったようです。
夫は自宅へ戻り、悲しみに暮れる妻を見守り続けます。
夫の姿は妻にも見えないのです。
やがて、妻は新しい生活を求めて引っ越していってしまいますが、
夫はこの家に残り続けます。
月日が流れ、家には他の家族が入居したりしながらも古びて廃屋となり、
やがて取り壊されてしまいます。
それでも夫はその場をさまよい続け・・・。
長い長い時の果てに、驚く展開があります。
幽霊は何もせずただあたりをさまよう存在となり、
ほとんどストーリーなどないに等しいのでは・・・?と思ったのですが、
意外にもこれは壮大なストーリーであったようです。
画面が専門的には何というのか分かりませんが、
ちょうど昔のテレビ画面のような縦横比で、四隅が丸みを帯びています。
そして、アメリカ映画には珍しくカメラの長回し。
同じシーンがず~っと長く映し出されます。
その中で、シーツを被せられた遺体が起き上がるシーンにはちょっとビビってしまいました。
はじめ妻が傍らにいて、立ち去ったあともずーっとその場面が続くのですよ。
とりあえずゴーストが登場することはわかっているわけですから、
きっとここで何かが動き出すのだろう・・・と思っていながらも、ドキドキ・・・!
長回しの効果ここにありって感じです。
妻は小さい頃から引っ越しを繰り返していて、
その都度何か詩のようなものを書いた紙片をどこかの隙間に隠しておいた、
というエピソードを夫に話していました。
そして、夫を亡くしてこの家を出ていくときにも、
妻は何かを書き付けて壁の隙間に差し込んで行ったのです。
幽霊の夫はその紙片が気になって仕方がありません。
幾度も取ろうと試みますが取れないのです。
いつしか、幽霊の夫の妄執は、
妻のことではなくその紙片のことになってしまっている・・・。
幽霊はもしかすると4次元の存在で、
3次元にはないもう一つの要素は「時間」なのかもしれません。
あるとき、幽霊のいる家でパーティーが行われ、そこである人が宇宙の未来のことを話し始めます。
私たちの住む地球を含む銀河系宇宙の未来。
この膨大な宇宙が最後の最後にはたった一点に収束してしまうのだ・・・と。
そんなとき、この地球に生きた人々の想い・意識は一体どこへ行ってしまうのだろう・・・。
幸福だったり悲惨だったりした、人の思念・豊かな文化や芸術の残滓は一体どこへ・・・?
そんなことを考えさせられる一瞬でした。
地味な作品なのですが、私は気に入りました!
<ディノスシネマズにて>
「A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー」
2017年/アメリカ/92分
監督:デビッド・ロウリー
出演:ケイシー・アフレック、ルーニー・マーラ
人の想いの不思議度★★★★★
意外な展開度★★★★☆
満足度★★★★.5
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