思い込み故に深みにはまる
* * * * * * * * * * * *
WOWOWの青山真治監督特集で、「映画工房」でオススメしていた一作。
1996年作品です。
1989年。
高校生・健次(浅野忠信)は、仮出所で帰ってきた片腕のヤクザ・安男(光石研)と再会します。
安男は、自分に何もかもなすりつけて知らぬフリの組長を恨んでいて、
組長を殺すことを決意して、行方を探そうとしていました。
そのため安男は知的障害のある妹のユリ(辻香緒里)と
ショルダーバッグを健次に預けて、出かけて行きます。
ところが、関係者の誰に聞いても「組長は死んだ」と言うのです。
嘘をつかれていると思った安男は、そういう者たちを次々殺していく・・・。
一方、ユリと健次はとあるドライブインで安男を待つことにしたのですが、
そんな時に健次は、精神病院に入院中の父が自殺したことを知り・・・。
「helpless」という題名の通り、どうにも救いようのない物語・・・。
父の病院に見舞ったり、兄貴分の安男と対面したり、
知的障害のユリと会話したりする時の健次は、
ちょっとやさぐれてはいるけれど、普通に優しい感情のある男子。
けれど、父が自殺したと知ったあと彼は豹変します。
心を病む父ではあるけれど、それが逆に
自分の存在価値の明かしであるかのように思っていたのかも知れない。
そんな父からも見捨てられたと思ったとき、
彼はもう生きる意味も見失って自暴自棄になってしまう。
感心にも、健次はずっと安男のバッグを開けてみなかったのですが、
最後についに中を見てしまいます。
私はもしや大金でも入っているのでは?などと思ったのですが、違いました。
でもある意味、それに類するものではあります。
そして、安男の「執念」の物体。
考えてみれば、安男にしても健次にしても、その時置かれた状況はそんなに悪いモノではないのです。
しかし、自らの「思い込み」故に暗い淵に落ち込んで行ってしまう。
それと対照的存在がユリということなのでしょう。
彼女はそもそもそんなに深く考えない。
自然体で生きるということ。
彼女は自然にそれができているけれど、それが案外難しいのかも知れません。
しんどく息苦しくなってしまう物語・・・。
浅野忠信さんのうんと若い頃が見られたのは儲けもの。
<WOWOW視聴にて>
「helpless」
監督・脚本:青山真治
出演:浅野忠信、辻香緒里、光石研、斉藤陽一郎
ブラック度★★★★★
満足度★★★☆☆
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます